電源ユニットのPFCは、電力の効率を改善し、無駄を減らすための技術です。
PFCに対応していることで電力効率の高い電源供給ができるため、電気代の節約や安定性能向上などのメリットがあります。
最近の電源ユニットであれば、約8割のものでPFCに対応していますが、PFCにも種類があり、仕様の見方も知っておいた方が選びやすいので、その辺りも含めて解説していきます。
- PFCは電源ユニットの電力効率を改善する技術
- 力率を向上させ、電気代の節約や安定動作に貢献
- PFCにはアクティブPFCとパッシブPFCの2種類がある
- アクティブPFCは力率を0.9以上に改善し、省エネ効果が高い
- パッシブPFCはコストが低いが、改善効果は限定的(現状ほぼ使われていない)
- 最近の電源ユニットの約8割がPFCを採用
- 対応・非対応であまり価格も変わらない
- PFCの種類や具体的な力率は製品仕様で確認
PCパーツと通販サイトを選ぶだけで、見積もり、互換性チェック、電源容量計算ができるツールも開発したのでぜひ活用してください。 最大5つの構成を保存できるので色々な構成を試せます。
≫ ツール:自作PCパーツの見積もり・互換性チェックツール
目次
電源ユニットのPFCについて
電源ユニットにおけるPFCの基本について解説していきます。
電源ユニットのPFCとは?
PFC(Power Factor Correction / 力率改善)は、電源ユニットの電力効率を向上させ、無駄な電力の消費を抑えるための技術です。
電源ユニットは、交流電源を直流電源に変換する役割を持っていますが、この変換の過程で電力の一部が無駄になってしまうことがあります。
PFCは、この無駄を最小限に抑えるために、電源ユニットが電力をより効率的に使用できるようにします。
具体的には、電源ユニットが電力を消費する際の電流と電圧の位相(タイミングのズレ)を一致させることで、無駄な電力の消費を減らします。
これにより、電力会社から供給される電力をより効率的に利用できるようになり、電気代の節約や環境への負荷の軽減につながります。
力率について
力率(Power Factor)とは、電気をどれだけ効率よく使えているかを示す指標です。
具体的には、電源から供給された電力のうち、実際に機器が利用できる割合を表します。
力率の計算は次のようにします。
有効電力(W / ワット) :実際に機器が使える電力
皮相電力(VA / ボルトアンペア):電源から供給される全体の電力
力率 = 有効電力(W) ÷ 皮相電力(VA)
力率の値は、0から1の間で表され、1に近いほど電力を効率よく使用していることを意味します。
例えば、力率が1.0(100%)なら、供給された電力を無駄なく使えている状態ですが、力率が0.6(60%)なら、供給された電力の40%が無駄になっていることになります。
電源ユニットや家電製品には、コイルやコンデンサの影響で電流と電圧のタイミング(位相)がズレることがあり、その結果、力率が下がることがあります。
この無駄な電力を「無効電力」といい、電力会社にとっては負担になりますし、家庭の電気代が高くなる原因にもなります。
そこで、PFC を搭載した電源ユニットを使うことで、力率を向上させ、無駄な電力を減らし、電力の効率を改善することができます。
通常の電源ユニットの力率は0.6~0.7程度にとどまりますが、アクティブPFCを採用した電源では、力率が0.9~0.99と非常に高くなり、省エネ効果が期待できます。
約8割の電源ユニットでPFCを採用
最近の電源ユニットでは、約8割の製品でPFCを採用しています。
大体の場合で対応しているので、PFCを採用した電源ユニットで絞り込んだがゆえに選択肢が極端に少なくなってしまうということはなさそうです。
そのため、PFC対応電源は比較的選びやすいと思いますね。
約8割で対応というのは、自作PCパーツの見積もり・互換性チェックツールの運営のために持っている電源ユニットのデータから算出したものです。
このツールでは、電源ユニットを選ぶ際にPFCに対応した電源ユニットを検索できるので、ぜひ活用してください。
また、後程詳しく解説しますが、PFCの種類や詳細な仕様には対応していないので、具体的に力率がどのくらいかについては各製品の仕様ページにて確認する必要があります。
PFCの種類
PFCの種類と力率の目安について解説します。
アクティブPFC
アクティブPFCは、電子回路を用いて電流の波形を調整するPFCです。
これにより、電力の無駄を減らし、電源ユニットがより少ない電力で同じ仕事をすることができるようになります。
アクティブPFCのメリットは次の通りです。
- 電力効率の向上
力率をほぼ1に近づけることで電力会社から供給される電力をより効率的に使用できる。 - 電気代の節約
電力損失の低減による電気料金の節約。
- 安定性の向上
入力電圧の変動に対しても安定した出力を提供することで機器の動作が安定する。 - 環境負荷の減少
電力供給システム全体の効率が向上し環境への負荷が減少する。
一方で、アクティブPFCのデメリットは次の通りです。
- 製造コストの増加
アクティブPFC回路を追加することで電源ユニットの製造コストが増加。 - 回路設計の複雑化
パッシブPFCに比べて回路が複雑で設計や製造が難しくなる。
一番気になるところは、アクティブPFCに対応することでどの程度価格が上がるかという部分ですが、正直変わりません。
PFC対応・非対応でその他の仕様が全く同じ電源ユニットを探すのはなかなか難しいので、純粋に対応・非対応のみの価格差というのは分からなかったのです。
しかし、対応状況別に電源ユニットの価格を見てみましたが、そんなに変わらない印象です。
それよりも、電源容量や80PLUS認証、その他の機能によって変わる価格の方が目立ちますね。
パッシブPFC
パッシブPFCは、大型のコイル(インダクタ)やコンデンサなどの受動部品を使用して電流の波形を整え、力率を改善するPFCです。
これにより、電力の無駄を減らし、電力会社から供給される電力をより効率的に利用することができます。
パッシブPFCのメリットは次の通りです。
- 低コスト
構造がシンプルでコストが低い。 - 高い信頼性
部品数が少なく故障する可能性が低いため信頼性が高い。
一方で、パッシブPFCのデメリットは次の通りです。
- 力率改善効果が限定的
力率が大体0.7~0.8と改善が限定的。
しかし、現在の自作PCの電源ユニットの事情で言うと、アクティブPFCの方が効率的であり、80PLUS認証の基準を満たしやすいということから、パッシブPFCはほとんど使われていません。
ケンさん
特に、80 PLUS認証の電源では、ほぼ確実にアクティブPFCが搭載されています。
もし、パッシブPFC搭載の電源を見かけた場合、それは古い製品か、低品質な電源である可能性が高いため、避けるのが無難でしょう。
種類別の力率の目安表
アクティブPFC、パッシブPFC、なしの場合の力率の目安や特徴をまとめました。
PFCの種類 | 力率の目安 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
アクティブPFC | 0.9~0.99 | ・力率が高く、電力効率が良い ・電気料金の節約 ・安定性の向上 ・環境負荷の減少 | ・コストが高い ・回路が複雑 |
パッシブPFC | 0.7~0.8 | ・コストが低い ・構造がシンプル | ・改善効果が限定的 |
なし | 0.6~0.7 | ・コストが低い | ・電力効率が悪い ・発熱が多い |
PFCの対応状況の確認
電源ユニットがPFCに対応しているか、また、具体的にどのPFCに対応していて、どの程度の効率かを確認する方法を解説していきます。
電源ユニットの製品仕様の確認
電源ユニットがPFCに対応しているか、どのPFCに対応していて、どの程度の効率かを確認するには、電源ユニットの製品仕様を見ます。
「アクティブPFC(PF>0.9全負荷時)」と記載がありますが、これは、アクティブPFCに対応していて、負荷が最大(全負荷時)になった場合でも、力率が0.9以上 になるということを示しています。
製品によっては、0.9といった数字がなく、単純に「アクティブPFC」といった記載しかない場合もあります。
PCパーツを検索できるサイトは色々あり、電源ユニットのPFC対応・非対応を絞って検索できるところも多いですが、PFCのタイプや具体的な力率で検索できることはほぼないので、細かい仕様を知りたい場合は各製品の公式ページを参照することになります。
自作PCツールで検索
自作PCパーツの見積もり・互換性チェックツールでは、PFCに対応した電源ユニットで絞り込むことができるので、ぜひ活用してください。
また、電源ユニット毎に製品ページのリンクも掲載しているので、具体的な仕様を確認したい場合もわざわざ製品名などで検索することなく一発で飛べて便利だと思います。
まとめ:電気代節約、安定動作重視の方はPFC対応の電源ユニットがおすすめ!
電源ユニットのPFCについて、基本的な知識や最近の対応状況、より具体的に仕様を確認する方法などを解説しました。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- PFCは電源ユニットの電力効率を改善する技術
- 力率を向上させ、電気代の節約や安定動作に貢献
- PFCにはアクティブPFCとパッシブPFCの2種類がある
- アクティブPFCは力率を0.9以上に改善し、省エネ効果が高い
- パッシブPFCはコストが低いが、改善効果は限定的(現状ほぼ使われていない)
- 最近の電源ユニットの約8割がPFCを採用
- 対応・非対応であまり価格も変わらない
- PFCの種類や具体的な力率は製品仕様で確認
PFCは、電力効率をあげるための重要な技術で、電気代の節約や安定性の向上につながるので、基本的にはアクティブPFCに対応した電源ユニットを選ぶのが良いでしょう。
特に、自作PCを長時間使う方や高負荷な用途で安定性を重視したい方にはおすすめですね。
約8割の電源ユニットがPFCに対応しているので、PFC対応の製品を選んだからと言って、電源容量やその他の機能の選択肢が極端に少なくなるということはないので、その点も選びやすいかなと思います。
PCパーツと通販サイトを選ぶだけで、見積もり、互換性チェック、電源容量計算ができるツールも開発したのでぜひ活用してください。 最大5つの構成を保存できるので色々な構成を試せます。
≫ ツール:自作PCパーツの見積もり・互換性チェックツール