メモリのヒートシンクは、パソコンの安定性とパフォーマンスを維持するために重要な役割があります。
基本的には、ヒートシンクのない普通のメモリで十分ですが、デザインにこだわりたい方、オーバークロックしたり、高負荷環境で使用したりする方は冷却性・システムの安定性、性能面からヒートシンク付きメモリも選択肢に入れて良いかなと思います。
しかし、ヒートシンク付きメモリの選び方を誤ると、CPUクーラーと物理的な干渉をしてしまって組み立てられない可能性もあります。
この記事では、そういった気を付けるべき点も含めて、メモリヒートシンクの役割やメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。
- メモリのヒートシンクは冷却性と安定性を向上
- 形状・色・RGB機能などデザイン面も向上
- OCや高負荷環境ではヒートシンク付きメモリが効果的
- 一般的な用途であればヒートシンクなしでもOK
- 大型の空冷式CPUクーラーとヒートシンク付きメモリは干渉するおそれ
- 普通のメモリと比べて価格が高くなる傾向にある
- 後付けのヒートシンクも存在するが、デザイン性に難あり
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目次
メモリのヒートシンクとは?
メモリのヒートンシンクは、メモリモジュールに取り付けられている放熱用の金属製カバーのことです。
メモリのチップが発する熱を効率的に外部へ逃がし、メモリの温度を低く保つ役割を果たしています。
ヒートシンクの材質は主にアルミニウムや銅で、形状やデザインは製品によってさまざまです。
メモリモジュール表面の金属性の放熱板は、メモリの温度を効率的に下げるために設計されています。
メモリが動作する際には熱が発生し、その熱を適切に管理しないと性能が低下したり、寿命が短くなったりする可能性があります。
そこで、メモリモジュールに金属製のヒートシンクを取り付けることで熱を効果的に放散します。
金属は熱伝導率が高いため、メモリから発生する熱を素早く吸収し、外部に放出する役割があります。
これにより、メモリの動作が安定し、長期間にわたって高い性能を維持することができます。
ケンさん
メモリのヒートシンクのメリット・効果
メモリのヒートシンクによるメリットや効果を解説していきます。
デザイン性能向上
メモリのヒートシンクは、自作PC全体のデザイン性能を向上させることができます。
さまざまな色や形状、RGB機能のヒートシンクがあるので、ユーザーは自分のPCケースのデザインなどに合わせて選ぶことができます。
これにより、PC全体の統一感やデザイン性が向上するので、より個性的なカスタマイズが可能になります。
既製品のパソコンではなく自作PCに目を向けるほどであれば、自分の作りたい性能、デザインなどのこだわりがあると思いますが、デザイン性を重視したいユーザーによってはヒートシンクはぜひ付けておきたいところですね。
放熱効果・冷却性能の向上
ヒートシンクが取り付けられていることで、メモリの発熱を効率的に拡散し、熱暴走や温度上昇による動作不安定を防ぎます。
メモリが動作中に発する熱は、特に高負荷時やオーバークロック時に大きくなります。
メモリ内部には数多くのIC(集積回路)チップがあり、これらが同時に動作することで発熱量が増加し、メモリ自体の温度が上昇します。
メモリの温度が高すぎると、データの読み書きエラーが頻発し、フリーズやブルースクリーンなどの障害が発生しやすくなります。
メモリのヒートシンクは、ICチップの表面に直接接触することで、熱を吸収し、ヒートシンク全体に熱を広げます。
ヒートシンクはアルミニウムや銅といった高い熱伝導性を持つ金属でできており、これによって熱を効果的に外部へ放出します。
結果として、メモリ全体の温度を下げることができ、安定した動作を維持することが可能です。
パフォーマンスの向上
メモリにヒートシンクを取り付けることで、パフォーマンスの向上が期待できます。
ヒートシンクはメモリモジュールから熱を効率的に放散し、過熱を防ぐ役割を果たします。
これにより、メモリが高負荷の状態でも安定して動作し続けることができ、システム全体のパフォーマンスが向上します。
特に、オーバークロックを行う場合や、高速なデータ処理が求められる環境では、ヒートシンクの影響でパフォーマンスが上がる可能性があります。
耐久性の向上
ヒートシンクがメモリチップや基板を物理的に保護するため、外部からのダメージ(圧力や振動など)に対する耐久性も向上します。
メモリモジュールは基板の上にICチップやコンデンサなどが並んでおり、これらの部品は振動や衝撃に対して弱いです。
特に、メモリの取り付け時や取り外し時には、基板を指で持ったり、力をかけたりするため、意図せず部品を傷つける可能性があります。
ヒートシンクが付いていることで、基板やICチップが外部からの物理的な衝撃から守られ、メモリの耐久性が向上します。
特に、長さがあるメモリモジュールでは、取り付け時に力が均等にかからないと基板がねじれてしまい、接触不良や断線の原因になることがあります。
ヒートシンクを装着することで基板全体に強度が増し、ねじれやすい箇所を補強できます。
また、金属製のヒートシンクは、静電気の放電を防ぐ効果もあります。
特に取り扱い時には、静電気によってICチップや基板が破損するリスクがあるため、ヒートシンクが取り付けられていると安心です。
寿命の延長
メモリにヒートシンクを取り付けることで、メモリの寿命を延ばすことができます。
高温は電子部品の劣化を早める原因となるため、適切な温度管理はメモリの長寿命化に繋がります。
特に、オーバークロックや高負荷の作業を行う場合、温度も高くなるので効果は大きいと思います。
メモリのヒートシンクのデメリット
メモリのヒートシンクによるデメリットを解説していきます。
物理的な干渉
メモリヒートシンクは、通常のメモリよりも高さがあるため、物理的な干渉を引き起こす可能性があります。
画像では普通のメモリですし、CPUクーラーもメモリスロットの上側には来ていないので大丈夫です。
しかし、メモリのヒートシンクが高く、かつ、大型の空冷式CPUクーラーの場合、CPUクーラーのヒートシンク部分の下側とメモリのヒートシンクが干渉することがあります。
組み立てやすさについても、干渉はしなかったとしても、CPUクーラーのファンやヒートパイプがメモリスロットに近接することが多く、取り付けづらくなることがあります。
さらにメモリを増設する際には、CPUクーラーを一度取り外さなければメモリスロットにアクセスできないということもあり得るので、その点も含めて考えておく必要があります。
パーツの購入前にCPUクーラーとメモリの寸法を事前に確認できればいいのですが残念ながらできません。
メモリの高さやCPUクーラーのヒートシンクまでの高さ、メモリスロットからCPUソケットまでの距離なそ必要な寸法が仕様からは分からないためです。
そのため、「干渉するかもな…」「干渉してまた買い直すに嫌だな…」と思う方は普通のメモリにした方が良いですね。
価格
ヒートシンクのメモリと普通のメモリの価格を比較すると全体的にヒートシンク付きの方が高くなる傾向にあります。
1つ金属製の部品を追加しているわけですから当然と言えば当然ですし、LEDで光るとなれば、LED部品もあるわけなのでより高くなります。
特に、冷却性能やデザインに優れた高品質なヒートシンクを選ぶと、その分価格が高くなる傾向があります。
また、ヒートシンク付きのメモリは、データ転送速度が速いなどの細かい仕様の性能が高い傾向にあるので、その性能の高さに伴って価格も高くなっていますね。
そのため、予算を抑えたいユーザーにとっては、ヒートシンク付きのメモリを選ぶことが難しくなる場合があります。
また、ヒートシンクが必ずしも必要でない環境で使用する場合、追加のコストが無駄になることも考えられます。
したがって、購入時には自分の使用環境や必要性をよく考えて選ぶことが重要です。
メモリのヒートシンクに関する補足情報
ヒートシンク付きのメモリを選ぶ際に役立つ補足的な知識を解説していきます。
RGB機能付きのメモリはRGB同期システムを確認
RGB機能付きのヒートシンクメモリを選ぶ際には、自作PC全体のライティングを統一させるために、どの同期システムに対応しているか確認するようにしましょう。
多くのメーカーは、専用のソフトウェアを提供しており、これを使用することで、ライティングのパターンや色を簡単にカスタマイズできます。
これにより、PCの外観を自分好みに調整することが可能になります。
もし、同期システムが合っていないと、メモリのライティングが他のパーツとズレたり、ソフトウェアの制御がうまくできない場合があるため、見た目や操作性に影響が出ることがあります。
メモリだけが異なるカラーやパターンで発光してしまうと、全体の統一感が損なわれ、見た目がチグハグになってしまいます。
統一感のあるライティングを実現するため PCのライティング環境を整える際に、CPUクーラー、メモリ、ケースファン、グラフィックカードなどのRGBデバイスがそれぞれ異なる動きをするのを防ぐため、同じ同期システムに対応している必要があります。
統一されたライティング効果を得るには、同じプラットフォーム上で制御するのが理想です。
制御ソフトウェアの互換性を確保するため RGBメモリの制御には専用のソフトウェアが必要で、多くの場合、各マザーボードメーカーが提供するRGB同期ソフトウェア(例: ASUS Aura Sync、MSI Mystic Light、Gigabyte RGB Fusionなど)を使用します。
これらのソフトウェアは異なるプロトコルで動作するため、対応するソフトウェアでないと、すべてのRGB機能を正しく制御できないことがあります。
同期システムが正しく機能しない場合、色がバラバラになったり、ライティングが不安定になることがあります。
したがって、RGB機能付きのメモリを選ぶ際には、使用しているマザーボードや他のデバイスが同じRGB同期システムに対応しているかを確認することが大切です。
≫ 関連記事:自作PCのLEDライティングを徹底解説
メモリのヒートシンクの必要性
メモリにヒートシンクが必要かどうかについては使用用途や環境によります。
一般的な用途であれば、メモリはそれほど発熱しないため、ヒートシンクがなくても問題ないことが多いです。
私は今まで、普段使い、ビジネス、3Dゲーム、プログラミング、データ分析・AI学習の用途にミドルレンジ、ハイエンドなPCを組んできましたが、どれもヒートシンクなしの普通のメモリを使ってきました。
しかし、今までメモリが故障したり、メモリのパフォーマンスが体感で分かるほど低下したりしたことはありません。
この中で、AI学習が最も高負荷かつ長時間運用で、CPU・GPU使用率が共に90%越え、1日24時間を半年間ぐらいで動かし続けたことがありますが、それでもメモリも含め他のパーツも全く問題がありませんでした。
AI学習は頻繁にメモリのデータが更新されるので、メモリへの読み書き頻度的にも高負荷だったと思います。
そのため、普通のメモリでも相当な高負荷状況でも耐えることができるので、無理に付ける必要は全くないと考えています。
しかし、オーバークロックを行う場合や高負荷の作業を長時間続ける場合に、より高いパフォーマンスを追求していきたい際には、検討しても良いかもしれませんね。
メモリが高負荷になると温度が上昇するので、それの冷却性能を高めてあげることによって、より高いパフォーマンスを維持できると思います。
メモリのヒートシンクの後付けについて
普通のメモリに対して、メモリのヒートシンクを後付けすることができるかについてですが、一応できます。
Amazonで見てみるとヒートシンクの金属板などが多くはないものの販売されています。
そのため、ヒートシンクを別途購入して貼り付けることで、後付けでヒートシンクメモリにすることができます。
しかし、後付けは一応可能ですが、通常は金属板やギザギザのヒートシンクを貼り付ける形になり、デザイン性に関しては難があり、見た目のカッコよさを求める方にはあまり向いていないかもしれません。
また、ヒートシンクを選ぶ際には、サイズや形状、素材を考慮する必要があります。
高さによってCPUクーラーと干渉しないようにしたり、分厚いヒートシンクで隣のメモリと干渉したりしないか考えましょう。
とは言え、自作PCにはデザイン面もこだわりたいユーザーが多いと思いますが、デザイン的にヒートシンクの後付けは厳しいかなと思います。
まとめ:無理に付けなくてもOK。見栄えが欲しいならあり!
この記事では、メモリのヒートシンクについて、その役割やメリット、デメリットを解説しました。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- メモリのヒートシンクは冷却性と安定性を向上
- 形状・色・RGB機能などデザイン面も向上
- OCや高負荷環境ではヒートシンク付きメモリが効果的
- 一般的な用途であればヒートシンクなしでもOK
- 大型の空冷式CPUクーラーとヒートシンク付きメモリは干渉するおそれ
- 普通のメモリと比べて価格が高くなる傾向にある
- 後付けのヒートシンクも存在するが、デザイン性に難あり
ヒートシンク付きメモリは、性能や寿命を向上させる役割を果たしますが、必ずしも全ての環境で必要というわけではありません。
一般的な使用ではヒートシンクがなくても問題ないことが多いですが、オーバークロックや高負荷作業を行う場合には有効です。
また、ヒートシンク付きメモリは見た目を結い窮したいユーザーにも非常に魅力的で、自作PC全体のデザイン性にも影響があります。
ただし、物理的な干渉やコスト面でのデメリットもあるため、購入時には慎重に検討することが重要です。
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