東芝は、グローバルなストレージソリューション企業として知られており、個人向けからエンタープライズ向け、一般用途から、NAS、サーバー向けなど幅広い製品ラインアップを展開しています。
代表的なHDDシリーズには、P300、X300、S300、N300、MN、MGシリーズと様々なものがありますが、今回は、これらの特徴や用途、違いについて解説していきます。
どのシリーズが自分の用途に合っているか知ることができるので、HDDを搭載しようと思っている方には参考になると思います。
- 東芝はグローバルなストレージ企業で、個人・企業向けHDDを提供
- 主なHDDシリーズはP300、X300、S300、N300、MN、MG
- P300:一般的なデスクトップPC向けのエントリーモデル
- X300:ゲーミング・クリエイター向けの高性能HDD
- S300:監視カメラシステム向けで連続録画に最適化
- N300:NAS向けでRAID対応・高耐久設計
- MG:データセンター・エンタープライズ用途
- 最新技術としてFC-MAMR・MAS-MAMR・ヘリウム充填を採用
- 9プラッタ設計で大容量化を実現、最大22TBモデルも
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目次
東芝とは?
HDDのシリーズの前に、まずは東芝とはどういう企業なのかを解説していきます。
グローバルなストレージソリューション企業
TOSHIBA(東芝)は、グローバルにストレージソリューションを展開しており、自作PCユーザー向けだけでなく、エンタープライズ向けのデータセンター用途や監視システム向けのHDDなど、BtoB市場にも強みを持つ企業です。
主にHDDを中心にストレージ製品を提供しており、特にエンタープライズ向けや監視カメラ用途では、その高い耐久性と信頼性で知られています。
HDD市場では、長年にわたり確かな技術力を活かし、独自の技術革新を続けながら、幅広いニーズに応える製品を提供し続けています。
多様な製品ラインアップ(特にHDDが有名)
TOSHIBA(東芝)は、多様なストレージ製品を提供しており、特にHDD分野で高い評価を得ています。
HDDでは、個人ユーザー向けから企業向けまで幅広いニーズに対応するため、用途に応じたモデルが揃っており、容量や性能の選択肢も豊富です。
例えば、デスクトップPCやノートPC向けの汎用HDDから、NAS・監視カメラ向けの高耐久モデル、さらにはデータセンターやエンタープライズ向けの大容量・高性能HDDまで、多岐にわたるラインアップが展開されています。
特に、エンタープライズやNAS向けのモデルでは、安定性と耐久性に優れた製品が評価されており、HDD市場において確固たる地盤を築いています。
東芝は、特定の市場セグメントで堅実なシェアを維持し、信頼性の高いストレージソリューションを提供し続けています。
HDDのシェアについて
HDDの主要なメーカーとしては、次の3つです。
- Western Digital(ウェスタンデジタル / WD)
- Seagate(シーゲート)
- 東芝
Western Digitalが圧倒的なシェアがありますが、次いでSeagateと東芝が同じぐらいのシェアがありますね。
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先進技術の導入
TOSHIBA(東芝)では、FC-MAMRやMAS-MAMRなどの次世代磁気記録技術、9プラッタ設計、ヘリウム充填技術 などを採用し、記録密度の向上や信頼性の向上を実現しています。
特に、データセンター向けやエンタープライズ向けのHDDにおいて、高い信頼性と大容量化 を両立させる技術開発を続けており、市場での確固たる地位を維持しています。
FC-MAMR
FC-MAMR(Flux-Controlled Microwave-Assisted Magnetic Recording)は、2021年に東芝が開発した独自の磁気記録技術で、磁気ヘッドに微細な振動を加えることで記録密度を向上させる技術です。
従来技術(CMR)と比較して安定した記録性能を維持し、同じ面積当たりのデータ容量が向上するので、HDDの大容量化に繋がりました。
最初の採用は、MG09シリーズ(18TB)で、この他にも22TBモデルなど大容量HDDに採用されています。
MAS-MAMR
MAS-MAMR(Microwave Assisted Switching MAMR)は、2023年に開発された技術で、FC-MAMRをさらに進化させたものです。
より効率的に磁気記録を行い、さらなる記録密度の向上を実現しており、次世代HDDの大容量化を支える技術です。
最初の採用は、MG10シリーズ(20TB)で、将来的には30TB以上のHDDも視野にあるようです。
9プラッタ設計
2018年に東芝のエンタープライズ向けHDD(MGシリーズ)は、9枚のプラッタを搭載することで大容量化を実現しました。
限られたHDDサイズのまま、より多くのデータを記録することが可能となり、データセンター向けの大容量ストレージに最適です。
従来の8プラッタ設計から1枚増やし、MG07シリーズ で12TB/14TB HDDを実現しました。
ヘリウム充填技術
プラッタ内部をヘリウムで満たすことで、空気抵抗を減らし、回転時の安定性を向上。
また、消費電力の削減によるエネルギー効率の向上、発熱の低減により耐久性の向上を実現しており、主に信頼性の面で重要な技術ですね。
2017年にMG07シリーズで最初に採用されたようです。
デュアルアクチュエータ技術(研究中)
磁気ヘッドのアクチュエータを2つ搭載し、データの読み書きを並行して行う技術のことです。
東芝はまだ研究段階のようで、市場投入の具体的な時期は未定とのこと。
SeagateやWestern Digitalが先行しているが、東芝も技術開発を進めているようです。
これが実現すれば、従来のHDDよりもデータアクセス速度が向上し、データセンター用途での高速処理に貢献します。
東芝のHDDシリーズ
TOSHIBA(東芝)のHDDには、P300、XN300、S300、MN、MGシリーズがあります。
それぞれの特徴や用途、違いについて詳しく解説していきましょう。
まずは、シリーズ別に簡単に表にまとめました。
シリーズ名 | 用途 | 特徴 | 保証 |
---|---|---|---|
P300 | 一般的なデスクトップPC | ・一般的なPC用HDD(3.5インチ) ・5400rpm / 7200rpmのモデル | – |
X300 | ハイパフォーマンス向け (ゲーミング/クリエイター) | ・高速処理向け ・7200 RPMの回転速度 ・高速キャッシュ搭載(最大512MB) | – |
S300 | 監視カメラシステム向け | ・監視カメラ用に最適化 ・24時間連続録画に対応 ・マルチストリーム録画に最適化 | 3年 |
N300 | NAS向け | ・NAS向けに最適化 ・24時間365日の連続運転対応 ・RAID対応と高耐久性 | 3年 |
MN | NAS向け | ・NAS向けに最適化 ・24時間365日の連続運転対応 ・RAID対応と高耐久性 ・現在はN300シリーズに統合 | 3年 |
MG | エンタープライズ データセンター向け | ・FC-MAMR / MAS-MAMR技術採用(最新モデル) ・ヘリウム充填 & 9プラッタ設計(大容量化) ・24時間365日連続運転対応 ・最大22TBの高容量モデル | 3年, 5年 |
各シリーズについて解説していきますが、大前提として、HDDのデータ転送速度は、NVMe SSDやSATA SSDと比べると遅いです。
そのため、現在はメインストレージにNVMe SSDを搭載するストレージ構成が多く、HDDは速度がそれほど求められないデータの保存やバックアップとして搭載することが多いです。
シリーズ内で速度差について言及することがありますが、それは東芝のHDDシリーズ内の話であって、速いからといってSSDのデータ転送速度を規格や性質上超えることはないので、それを大前提に見ていただければと思います。
P300
TOSHIBA(東芝)のP300シリーズは、デスクトップPC向けの3.5インチHDDで、一般的なパソコン用途に適したストレージ製品です。
主に、データ保存、ゲーム、動画編集などの用途で使われており、家庭用やビジネス用のPCに幅広く対応しています。
このシリーズの特徴として、回転数が5400rpmのモデルと7200rpmのモデルが存在し、用途に応じて選択できます。
静音性や消費電力を重視する場合は5400rpmモデル、高速なデータアクセスが求められる場合は7200rpmモデルが適しています。
また、記録方式にはCMR(従来型磁気記録方式)を採用しており、安定した書き込み性能と信頼性を提供しています。
最大容量は6TBまでラインナップされており、大容量データの保存にも適しています。
さらに、キャッシュ容量がモデルによって異なり、最大256MBのキャッシュを搭載したモデルもあるため、データの読み書き速度を向上させる工夫がされています。
P300シリーズはコストパフォーマンスにも優れており、価格と性能のバランスが取れた製品として、デスクトップPC向けHDDの定番モデルの一つとなっています。
X300
TOSHIBA(東芝)のX300シリーズは、高性能なデスクトップPC向けの3.5インチHDDで、特にゲーマーやクリエイター向けに設計されています。
一般的なデスクトップ向けHDDであるP300シリーズと比べて、より高速なデータ処理能力を備えており、大容量データの保存や、高速な読み書きを必要とする環境に適しています。
X300シリーズの最大の特徴は、次の2点です。
- 回転数7200rpmの高性能設計
- 大容量キャッシュ(最大512MB)
これにより、ゲームのロード時間短縮や、動画編集・3Dレンダリングなどの重い処理において、安定したパフォーマンスを発揮します。
また、最大22TBの大容量モデルがラインナップされており、大量のゲームデータや高解像度の動画・画像ファイルを保存するのに適しています。
ただし、これはHDDの中での話なので、規格上データ転送速度の速いNVMe SSDの方が快適になるので、容量的や予算的に問題ないのであれば、ゲーム・動画編集にはNVMe SSDがおすすめです。
S300
TOSHIBA(東芝)のS300シリーズは、監視カメラシステムや防犯用途向けに設計された3.5インチHDDです。
一般的なデスクトップPC向けのHDDとは異なり、24時間365日の連続稼働を前提とした高耐久設計が特徴で、長時間の映像録画や複数台のカメラからの同時データ書き込みに適しています。
S300シリーズは、監視カメラの録画データを安定して処理するために、ストリーミング録画向けに最適化されたファームウェアを搭載しています。
これにより、録画中のフレームドロップを防ぎ、映像が途切れることなくスムーズに記録できるようになっています。
また、振動センサーを搭載しており、複数台のHDDを組み合わせた録画システムにおいても、安定した動作を維持することが可能です。
多くの監視カメラ映像を長期間保存できるため、大規模な防犯システムや企業の監視システムなどにも適しています。
また、最大64台のHDカメラの録画データに対応しており、一般家庭用の防犯カメラシステムから、商業施設やオフィスの監視用途まで幅広く使用できます。
S300シリーズには、標準モデルの他に、より高耐久なS300 Proシリーズが存在します。
S300 Proは、さらに高度なエンタープライズレベルの耐久性を持ち、長期間の連続運用や、大容量データの処理に特化した設計となっています。
標準のS300でも高い耐久性がありますが、より負荷のかかる大規模監視システムやプロ仕様の用途にはS300 Proが適しています。
N300
TOSHIBA(東芝)のN300シリーズは、NAS向けに設計された3.5インチHDDで、特にRAID環境や24時間365日稼働を前提とした高耐久設計が特徴です。
一般的なデスクトップPC向けHDDとは異なり、NASでの連続運用に最適化されており、企業のファイルサーバーや個人のホームNASなど、幅広い用途で利用されています。
N300シリーズの最大の特徴は、耐久性と安定性の高さにあります。
一般的なHDDよりも耐振動性を強化しており、振動センサーを搭載することで複数台のHDDを組み合わせたRAID構成でも安定して動作します。
また、ヘッドの制御技術を最適化することで、長時間のデータアクセスが続く環境でもエラーを最小限に抑える設計となっています。
記録方式はCMR(従来型磁気記録方式)を採用しており、大容量データを安定して書き込むことが可能です。
これにより、動画ファイルやバックアップデータなどの大きなデータの書き込みが頻繁に発生するNAS環境でも、高速かつ安定した動作を実現しています。
回転数は7200rpmで、同クラスのNAS向けHDDと比較しても優れたパフォーマンスを発揮します。
最大容量は22TBと非常に大きく、家庭用NASから中小企業のデータサーバーまで、幅広い用途に対応できます。
特に、PlexやSynology、QNAPなどのNASデバイスと組み合わせることで、動画ストリーミングやバックアップ用途に最適なストレージ環境を構築できます。
また、N300シリーズは最大8(N300 Proは最大24)ベイのNAS環境に対応しているため、小規模なNASシステムから大規模なRAID構成まで柔軟に利用可能です。
これにより、家庭用の小型NASから、企業のファイルサーバーやクラウドストレージ環境まで、さまざまなシナリオで活用できます。
MN
TOSHIBA(東芝)のMNシリーズは、N300シリーズと同様にNAS向けに設計された3.5インチHDDです。
かつてNAS向けの高耐久HDDとして広く使用されていましたが、現在ではN300シリーズがその役割を引き継いでおり、実質的な後継モデルとなっています。
MG
TOSHIBA(東芝)のMGシリーズは、エンタープライズ向けに設計された3.5インチHDDで、データセンター、企業向けサーバー、大規模ストレージシステムなどで使用される高信頼性のストレージです。
長時間の連続稼働や大量のデータ処理が求められる環境で使用することを前提としており、高耐久性・高性能・大容量を兼ね備えています。
MGシリーズの最大の特徴は、エンタープライズレベルの耐久性と信頼性です。
データセンターやクラウドストレージのように24時間365日稼働する環境に対応するため、エラーリカバリー制御技術、振動補正機能、エンタープライズ向けファームウェアが搭載されています。
また、CMR(従来型磁気記録方式)を採用しており、安定したデータ書き込み性能を発揮します。
インターフェースは、SATA 6GbpsモデルとSAS 12Gbpsモデルの2種類が用意されており、用途に応じて選択できます。
SATAモデルは一般的なストレージサーバー向け、SASモデルはより高速なデータ処理が必要なエンタープライズ環境向けに最適化されています。
また、SASモデルはデュアルポート対応で、冗長性を確保することでシステムの信頼性を向上させることができます。
MGシリーズは、7,200rpmの高回転速度を持ち、大容量データの読み書きを高速で処理できます。
特に、MG07シリーズ以降はヘリウム充填技術を採用しており、ディスクの摩擦を低減しつつ、大容量化と省電力化を実現しています。
これにより、最大22TBの大容量モデルがラインナップされ、データセンターなどでのストレージ効率を向上させています。
MGシリーズは主にデータセンター、クラウドストレージ、大規模RAIDシステム、仮想化環境などでの使用を想定しており、一般的なPCやNAS用途には適していません。
特に、RAID環境での信頼性を高めるためにエンタープライズ向けのエラーリカバリー機能が搭載されているため、データ保全が重要な業務用途に適しています。
一方で、一般的なNASや個人用途では、N300シリーズ(NAS向け)の方がコストパフォーマンスが良く、適切な選択肢となります。
しかし、大規模なデータストレージやクラウド環境を構築する際には、MGシリーズの高信頼性と大容量が大きなメリットとなります。
まとめ:特徴や用途を知って適切なものを選ぼう!
東芝の特徴や技術、展開しているシリーズ別の特徴、用途、違いなどを解説しました。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- 東芝はグローバルなストレージ企業で、個人・企業向けHDDを提供
- 主なHDDシリーズはP300、X300、S300、N300、MN、MG
- P300:一般的なデスクトップPC向けのエントリーモデル
- X300:ゲーミング・クリエイター向けの高性能HDD
- S300:監視カメラシステム向けで連続録画に最適化
- N300:NAS向けでRAID対応・高耐久設計
- MG:データセンター・エンタープライズ用途
- 最新技術としてFC-MAMR・MAS-MAMR・ヘリウム充填を採用
- 9プラッタ設計で大容量化を実現、最大22TBモデルも
最近主流のストレージ構成としては、NVMe SSD 1台の構成が圧倒的に人気なので、HDDを使う機会は少なくなっています。
ひとまずメインストレージをSSDにしつつも、その上で、データ転送速度が必要のない、かつ、データ容量を確保したい場合に、HDDは選択肢になってきます。
シェア的にはWestan Digital、Seagateに次ぐ3位なので、選択肢には入ると思います。
後は、P300、X300、S300、N300、MN、MGとシリーズが様々ですが、単純にデータ容量を増やすのであればP300で大丈夫ですし、NAS向け、監視カメラ向け、企業向けなど様々な用途に対応しているので、適切なものを選びましょう。
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