電源ユニットにおいて、105℃コンデンサは高温環境でも安定した性能を発揮する重要な部品です。
通常の85℃コンデンサに比べて耐久性が高く、長寿命であるため、特に、3Dゲームやクリエイティブなどの高負荷な用途のパソコンやサーバーなどの機器において信頼性を向上させます。
- ゲームや動画編集などの高負荷用途に適している
- 逆に低負荷環境ではメリットを活かしにくい
- 105℃コンデンサ搭載電源ユニットの価格差はそれほどない
- 105℃コンデンサは高温環境でも安定した性能を発揮する
- 85℃コンデンサよりも長寿命で電源ユニットの信頼性を向上
- 高温環境下での電解液の蒸発を抑え、容量低下を防ぐ
- 日本メーカー製コンデンサが多く採用されている
もし、ゲームや動画編集などの高負荷な用途(消費電力が大きい用途)であれば、電源ユニットの寿命を長くし、安定した電源供給ができるように105℃コンデンサ搭載の電源ユニットがすすめですね。
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目次
電源ユニットの105℃コンデンサについて
電源ユニットに使用される105℃コンデンサの基本的な特徴と通常のコンデンサとの違いについて解説していきます。
そもそもコンデンサとは?
コンデンサ(Capacitor)は、電気を蓄えたり放出したりする電子部品で、日本語では「蓄電器」とも呼ばれます。
電子回路や電源回路で広く使用されていますが、コンデンサには次のような役割があります。
- 電圧の安定化
電源供給時の電圧変動を抑え、安定した電力をPCに供給する。 - ノイズの除去(リップル低減)
電源の出力に含まれるノイズ(リップル)を低減し、安定したDC電流を供給。 - 一時的な電力供給(バッファ)
瞬間的な負荷変動が発生した際に、一時的に電力を供給してシステムの安定性を向上。 - 電源寿命に影響
劣化すると電圧変動や故障の原因になり、電源ユニット全体の寿命を縮める。
コンデンサは、電源ユニットの品質を決める重要な要素の一つで、電源ユニットの安定性や寿命に大きく影響を与えます。
105℃コンデンサとは?
105℃コンデンサとは、電源ユニットに使用されるコンデンサの中で、高温環境に耐えることができるタイプを指します。
通常のコンデンサは85℃までの温度に耐えることが一般的ですが、105℃コンデンサはその名の通り、105℃までの高温に耐えることができます。
これにより、電源ユニットが高温環境下でも安定して動作することが可能になります。
特に、3Dゲームやクリエイティブなどの高負荷な用途のパソコンやサーバーなどの機器では、内部で発生する熱が高くなることがあるため、105℃コンデンサは信頼性を高めるために重要です。
また、105℃コンデンサは長寿命であることが多く、結果として電源ユニット全体の寿命を延ばすことにも繋がります。
105℃と85℃コンデンサの比較
一般的な85℃のコンデンサと高耐久の105℃コンデンサの特徴を比較してみましょう。
特徴 | 105℃コンデンサ | 85℃コンデンサ |
---|---|---|
温度耐性 | ・最大105℃まで対応 ・高温環境に強い | ・最大85℃まで対応 ・高温環境には不向き |
寿命 | ・長寿命 ・高温でも安定した性能 | ・比較的短寿命 ・高温での性能低下が早い |
用途 | ・産業機器 ・高温環境での使用 | ・一般的な電子機器 ・低温環境での使用 |
コスト | ・高価 | ・比較的安価 |
105℃コンデンサは高温環境での電解液の蒸発を抑えることができるため、容量の低下を防ぎ、長期間にわたって安定した性能を発揮します。
一方、85℃コンデンサはコスト面でのメリットがありますが、温度が高くなると性能が低下しやすく、寿命も短くなる傾向があります。
そのため、電源ユニットの使用環境や求められる信頼性に応じて、適切なコンデンサを選択することが重要です。
また、コンデンサ単体では105℃コンデンサの方がコスト面で高価になりますが、自作PCの電源ユニットの価格で見るとそれほど差があるわけではありません。
どちらのコンデンサが採用されているかよりも、電源容量や80PLUS認証、ケーブルの種類や本数などによる価格差の方が大きいので、それほど気にすることはありません。
105℃コンデンサのメリット
105℃コンデンサのメリットについては次の通りです。
高耐久性
一般的な電解コンデンサは85℃までの対応が多いのに対し、105℃コンデンサは最大105℃までの高温環境でも安定して動作します。
特に、ゲームやクリエイティブ、AI学習などの高負荷な用途、ワークステーション向けといったPCでは、消費電力が大きく電源ユニット内の温度が上昇しやすいです。
そのため、コンデンサの耐熱性が重要になってきます。
温度が高くなるとコンデンサの劣化が進みやすくなるため、高温に耐えられる105℃コンデンサを採用することで寿命を延ばし、電源ユニット全体の信頼性を向上させることができます。
寿命の向上
長期間使用していると内部の電子部品が劣化し、最終的には電源ユニット全体の寿命が尽きてしまいます。
その中でも特に影響を受けやすいのが電解コンデンサであり、その寿命は電源ユニットの寿命と密接に関係しています。
電解コンデンサの寿命は、温度が10℃上昇するごとに約半減するという特性(アレニウスの法則)があります。
アレニウスの法則は、電解コンデンサの劣化を予測するための一般的な基準となっています。
この基準に従って、使用温度別の寿命の目安をまとめると次のようになります。
使用温度(℃) | 85℃コンデンサの寿命 | 105℃コンデンサの寿命 |
---|---|---|
85℃ | 2,000時間 | 8,000時間 |
75℃ | 4,000時間 | 16,000時間 |
65℃ | 8,000時間 | 32,000時間 |
例えば、85℃対応のコンデンサを85℃の環境で使用した場合の寿命が2,000時間とすると、105℃対応のコンデンサでは同じ温度環境で約8,000時間の寿命を持つことになります。
実際の使用環境では、電源ユニット内部の温度は通常50〜70℃程度になるため、105℃コンデンサを使用した電源は85℃品よりも数倍の寿命を持つ可能性があります。
安定した電力供給
PCの各パーツが適切に動作するためには、電圧や電流の変動が少なく、安定した電力が供給される必要があります。
特に、高負荷時や長時間の使用において、電源が不安定だとPCの動作が不安定になったり、最悪の場合、パーツの故障につながる可能性があります。
コンデンサの品質が高いほど、電源の出力電圧のブレが少なくなり、ノイズやリップル(電圧の微細な変動)が低減されるため、PC全体の安定した動作につながります。
特に、PCの電源供給は、CPUやGPUが高負荷状態になったときに瞬間的に大きな電力を必要とします。
このような急激な電力変動に対しても、105℃コンデンサは容量低下が起こりにくく、安定した電圧を維持しやすくなります。
液漏れ・膨張リスク低減
105℃コンデンサを使用することで、液漏れや膨張のリスクを軽減できます。
高温に強いことで、コンデンサ内部の電解液が蒸発しにくく、結果として液漏れや膨張のリスクが減少します。
これにより、電源ユニット全体の故障リスクを抑え、長期間にわたって安定した動作を維持することが可能です。
105℃コンデンサのデメリット
105℃コンデンサのデメリットについては次の通りです。
コストが高い
コンデンサの部品単体で見ると105℃コンデンサは、一般的な85℃コンデンサに比べてコストが高いです。
105℃コンデンサは高温環境でも安定して動作するため、より高品質な材料と製造プロセスが必要なため、製造コストが高くなります。
とは言え、電源ユニットの価格で見た時に、105℃コンデンサのものと85℃コンデンサのもので比較した時に、価格差が大きいかと言われればそのようなことはありません。
どちらかと言うと、電源容量や80PLUS認証、その他の仕様による価格差の方が大きいですね。
低温環境ではメリットが少ない
低負荷環境では、そもそも電源ユニットにかかる負担が小さいため、105℃コンデンサを採用した高品質な電源ユニットを選んでも、メリットを十分に活かせない場合があります。
低負荷環境とは、PCの消費電力が小さく、電源ユニットにかかる負荷が少ない状態のことを指します。
例えば、以下ような用途は低負荷環境です。
- オフィスPCや事務用PC(文書作成、メールチェックなど)
- 動画視聴やSNS閲覧といったネットサーフィンなどの軽い用途
- アイドル状態(何も作業していない状態)が多い
- 省電力設計のPC(小型PC、低消費電力CPU搭載のPC)
これらの用途では、電源ユニットの負荷が小さいため、電源内部の温度上昇も少なく、コンデンサの劣化が進みにくいです。
105℃コンデンサは高温環境での耐久性が高いというメリットがありますが、低負荷環境では電源ユニット自体の発熱が少なく、そもそも高温状態になりにくいため、その耐熱性が活かされにくくなります。
例えば、高負荷なゲーミングPCでは電源ユニット内部の温度が70~80℃に達することもありますが、オフィスPCのような低負荷環境では40~50℃程度で安定することが多いです。
この温度域では、85℃コンデンサでも十分な寿命を確保できるため、105℃コンデンサを選ぶ必要性が低くなります。
105℃コンデンサ搭載の電源ユニットの特徴
105℃コンデンサを採用した電源ユニットの特徴について解説します。
一般的な電源ユニットでも105℃コンデンサ搭載モデルはある
一般的な85℃コンデンサよりも105℃コンデンサの方が高価な部品なので、105℃コンデンサ搭載の電源ユニットも高価なものに限られてくると思われるかもしれません。
しかし、実際には、一般的なエントリークラスやミドルクラスの電源ユニットでも、105℃対応のコンデンサを搭載したモデルが存在します。
また、大体5~6割の電源ユニットで105℃コンデンサを採用しているので、他に欲しい仕様や機能を満たしつつ、105℃コンデンサの電源ユニットを選べるだけの製品数はあります。
そのため、高負荷な使用用途の方は、ひとまず105℃コンデンサの電源ユニットで絞っても良いかもしれませんね。
ゲームやクリエイティブなどの高負荷な用途・ワークステーション向け
105℃コンデンサ搭載の電源ユニットは、出力電圧のブレを少なくし、ノイズやリップルを低減してくれるので、高負荷な用途でも安定した動作が可能となります。
急激な電力変動に対しても、105℃コンデンサは安定した電圧を維持しやすくなるので、CPUやGPUが高負荷になりがちな用途でおすすめですね。
高負荷な用途とは、自作PCの大部分の電力を消費するCPUやGPUが高負荷になるような用途を指しています。
- 3Dゲーム
- 画像・動画編集
- 3Dレンダリング
- AI学習
- データ分析
- シミュレーション計算
- ワークステーション向け
また、アレニウスの法則からも電源ユニット内部の温度が高くなりやすい環境では、耐熱性の低い85℃コンデンサよりも105℃コンデンサの方がが長寿命で信頼性が高いと言えます。
日本メーカー製コンデンサを採用することが多い
105℃コンデンサ搭載の電源ユニットでは、日本メーカー製コンデンサを採用することが多いです。
いくつかの電源ユニットを確認しましたが、ほとんどが日本製の105℃コンデンサを採用していて、まれに台湾製とかがありましたね。
ケンさん
日本メーカーを採用する理由としては、品質と信頼性の高さにあります。
特に105℃コンデンサは、高温環境での動作が求められる電源ユニットにおいて重要な部品です。
日本のメーカーは、長年にわたる技術開発と品質管理により、優れた性能を持つコンデンサを提供しています。
これにより、電源ユニットの耐久性や安定性が向上し、長期間にわたって安心して使用することができます。
また、日本製コンデンサは、厳しい品質基準をクリアしており、製品全体の信頼性を高める要因となっています。
105℃コンデンサ搭載の電源ユニットの見分け方
105℃コンデンサ搭載の電源ユニットかどうか確認する方法を紹介します。
電源ユニットの仕様の確認
電源ユニットが105℃コンデンサを採用しているかどうかは、公式ページの製品仕様を確認します。
ページ一番上
ページ途中の特徴解説
こういう感じで、ページ一番上の電源ユニットの特徴リストやページ途中の1つ1つの特徴を説明する部分で書かれていることが多いです。
また、別でPDFのデータシートが用意されていて、そこに書かれている製品もありました。
一方で、こういった仕様表みたいなところには書かれていないことが多かったので、仕様を確認する時は注意が必要です。
「Ctrl + F」でページ内を検索できるので、「105」「105℃」などで検索すると素早く確認することができます。
自作PCツールで検索
自作PCパーツの見積もり・互換性チェックツールでは、105℃コンデンサに対応した電源ユニットで絞り込むことができるので、ぜひ活用してください。
また、電源ユニット毎に製品ページのリンクも掲載しているので、具体的な仕様を確認したい場合もわざわざ製品名などで検索することなく一発で飛べて便利だと思います。
まとめ:長寿命・安定性・高負荷な用途の方は105℃コンデンサ搭載の電源ユニットがおすすめ!
電源ユニットの105℃コンデンサについて、メリットやデメリット、105℃コンデンサ搭載の電源ユニットの特徴、見分け方などを解説しました。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- ゲームや動画編集などの高負荷用途に適している
- 逆に低負荷環境ではメリットを活かしにくい
- 105℃コンデンサ搭載電源ユニットの価格差はそれほどない
- 105℃コンデンサは高温環境でも安定した性能を発揮する
- 85℃コンデンサよりも長寿命で電源ユニットの信頼性を向上
- 高温環境下での電解液の蒸発を抑え、容量低下を防ぐ
- 日本メーカー製コンデンサが多く採用されている
ネットサーフィンや資料作成・メールといった低負荷な用途では、そもそも電源ユニットの温度がそれほど高くならないので、105℃コンデンサのメリットを活かせないでしょう。
もちろん、それを理解した上で長寿命を理由に選ぶのは良いのですが、最大限活かすとなると、3Dゲームや動画編集、AI学習といったCPUやGPUが高負荷な用途ですね。
電源ユニットの価格としては、105℃コンデンサと85℃コンデンサであまり差はなく、むしろ電源容量や80PLUS認証、ケーブルの種類や本数といった機能面での価格差の方が大きい印象です。
また、ごく一部の電源ユニットしか105℃コンデンサに対応しているというわけではなく、大体5~6割程度対応しているため選択肢も豊富です。
そのため、高負荷な用途で使うユーザーであれば、ひとまず105℃コンデンサ搭載で絞って探すのも良いかもしれませんね。
PCパーツと通販サイトを選ぶだけで、見積もり、互換性チェック、電源容量計算ができるツールも開発したのでぜひ活用してください。 最大5つの構成を保存できるので色々な構成を試せます。
≫ ツール:自作PCパーツの見積もり・互換性チェックツール