CPU内蔵GPUは、CPUに組み込まれたグラフィック機能のことで、これにより、別途グラフィックボードを搭載しなくても映像出力が可能になります。
そのため、グラフィック性能が大して必要でない使用用途の場合は、高性能で高価なグラフィックボードを購入しなくても、内蔵GPU機能を使うことで、コストを抑えることができます。
しかし、グラフィックボードと大きな性能差がありますし、高いグラフィック性能が必要な用途をしっかりと見極めないと、やりたいことができないということに繋がりかねません。
また、全てのCPUに内蔵GPU機能が付いているわけではないので、間違えてしまうと映像出力ができないという事態にもなるかもしれません。
そこで、CPU内蔵GPUのグラフィック性能はどの程度なのか、どういう使用用途に適しているのか、また、内蔵GPUに対応しているCPUなのかを判別する方法などを解説していきます。
- CPU内蔵GPUはCPUのグラフィック機能
- 映像出力には、CPU内蔵GPU or グラフィックボードが必要
- CPU内蔵GPUの性能は、最低限映像出力できる程度(グラボの5分の1)
- 3Dゲームなどの高いグラフィック性能が必要な場合は、グラフィックボードが必須
- Intelの場合:末尾に「F」で内臓GPUが非搭載
- AMDの場合:末尾に「G」で内蔵GPUが搭載、「F」で非搭載
CPUのメーカーや型番の見方、性能の目安などの基本知識、性能面や互換性の観点から選び方も解説しています。
≫ 関連記事:自作PCのCPUの選び方【性能面 / 機能面 / 互換性】
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CPU内蔵GPUとは
まずは、CPU内蔵GPUについての基本的な知識を解説します。
CPU内蔵GPUはCPUのグラフィック機能
CPU内蔵GPUは、CPUに内蔵されているグラフィック機能のことを言います。
呼び方は、内臓GPU、統合グラフィックス、iGPU(integrated GPU)などがあります。
iGPUに対して、dGPU(discrete GPU)はグラフィックボードのことを指します。
このCPU内蔵GPUにより、別途グラフィックカードを購入しなくても、パソコンの映像を出力するグラフィック処理が可能になります。
グラフィックボードとの性能差については後述しますが、日常的な作業や軽いゲーム、動画再生などにおいては十分な性能です。
CPU内蔵GPUは、消費電力が少なく、コストパフォーマンスに優れているため、ノートパソコンや小型デスクトップパソコン、普段使いやビジネス向けのスタンダードなパソコンなどで広く利用されています。
グラフィックボードを搭載しない場合はCPU内臓GPUが必須
CPUには、内蔵GPUに対応しているものと対応していないものがあり、映像出力をするためには、CPU内蔵GPUかグラフィックボードのどちらかが必要となります。
そのため、グラフィックボードを搭載しない構成で自作PCを考えている場合は、CPU内蔵GPUが必須となります。
表にまとめると次のようになります。
CPU内蔵GPU | |||
---|---|---|---|
あり | なし | ||
グラフィックボード | あり | ○ | ○ |
なし | ○ | × (映像出力できない) |
CPU内蔵GPUかグラフィックボードの両方がある、または、どちらかがある場合は、問題なくモニターに映像出力が可能です。
しかし、両方ない場合は、モニターと映像出力ケーブルでつないでも、パソコン自体にグラフィック機能が備わっていないため、映像出力ができません。
そのため、特に、グラフィックボードを搭載しない構成の場合は、絶対に、CPUに内蔵GPU機能があるか確認しましょう。
逆に言うと、内蔵GPU機能がないCPUを使う場合は、グラフィックボードが必須となります。
グラフィックボードを搭載していてもCPU内蔵GPUはあった方が良い
グラフィックボードを搭載している場合は、内蔵GPU機能のないCPUを搭載していても映像出力はできます。
また、グラフィックボードということで、CPU内蔵GPUより高いグラフィック性能があるため、グラフィック性能が必要な用途でも十分に使うことができます。
そのため、グラフィックボードを搭載していれば、CPU内蔵GPUは不要と考えるかもしれません。
しかし、普段パソコンを使う際には不要ですが、メンテナンスをする際に、CPU内蔵GPUがあった方が良い場合もあります。
例えば、グラフィックボードが故障した場合や問題が発生しているかを確認するためにグラフィックボードを取り外す必要がある場合、内蔵GPUがないと映像出力ができなくなります。
そのため、故障や問題の特定、診断や修理などが難しくなることがあります。
CPU内蔵GPUがあれば、グラフィックボードを取り外してもパソコンを使用できるため、問題の原因を特定しやすくなります。
また、グラフィックボードのドライバの更新や再インストールが必要な場合にも、内蔵GPUがあると便利です。
ドライバのインストール中に問題が発生して一時的に映像出力ができなくなってしまっても、内蔵GPUがあればパソコンを再起動して映像出力をすることができます。
このように、グラフィックボードを搭載しているのであれば、普段使っている分には問題ありません。
しかし、故障やメンテナンスする際に、場合によってはグラフィックボードを外したい時がでてくるので、その際にCPU内蔵GPUがあれば便利です。
ケンさん
ただし、内蔵GPUが対応している方が、+3,000円~+5,000円ほど高くなるので、予算と相談した上で内蔵GPUが対応しているCPUにするかどうか決めましょう。
CPU内蔵GPUの性能について
CPU内蔵GPUは、基本的に最低限の映像出力ができる程度の性能です。
具体的に、グラフィックボードとの性能差やどのくらいの用途で使えるのかを見ていきましょう。
CPU内蔵GPUは最低限映像出力する程度の性能
CPU内蔵GPUは、最低限映像出力するためのグラフィック機能なので、グラフィックの性能としてはそれほど高くありません。
使用用途としては、次のようなものがあります。
- 普段使い(ウェブ、動画視聴)
- ビジネス用途(Officeソフト、資料作成、メールなど)
- プログラミング
- 軽い画像・動画編集
- 2Dゲーム
- トレード(株、FX、仮想通貨)
主に、高いグラフィック性能を必要としない使用用途となります。
CPU内蔵GPUは、消費電力が少なく、コストを抑えることができるため、一般的な用途には非常に便利ですね。
特に、日常的な作業や趣味の範囲での使用であれば、CPU内蔵GPUは便利な選択肢となります。
グラフィックボードの方が5倍以上高性能
グラフィックボードは、CPU内蔵GPUのより約5倍ほど高いグラフィック性能を持っています。
もちろん、製品によっては全然違ってきますが、性能高めなCPU内蔵GPUと”低めのグラフィックボード”という控えめな比較して約5倍です。
ハイスペックなものと比較すると15倍ほど変わってきます。
CPU内蔵GPUは、CPUとしてパソコン全体の処理をしながら、片手間でグラフィックに関する処理をしているイメージです。
また、物理的にもグラフィックボードの方がチップサイズが大きいですし、グラフィック専門で処理するのがグラフィックボードなので性能に差があるのは当然ですね。
一発で分かるように、CPU内蔵GPUとグラフィックボードのベンチマークスコアをグラフで見ていきましょう。
GPU | スコア |
---|---|
NVIDIA GeForce RTX 4090 | |
NVIDIA GeForce RTX 4080 | |
NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER | |
NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti | |
NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti SUPER | |
AMD Radeon RX 7900 XTX | |
NVIDIA GeForce RTX 4070 SUPER | |
NVIDIA GeForce RTX 3090 Ti | |
AMD Radeon RX 7900 XT | |
AMD Radeon RX 6950 XT | |
NVIDIA GeForce RTX 3080 Ti | |
NVIDIA GeForce RTX 4070 | |
AMD Radeon RX 6900 XT | |
NVIDIA GeForce RTX 3090 | |
NVIDIA GeForce RTX 3080 12GB | |
NVIDIA GeForce RTX 3080 | |
AMD Radeon RX 6800 XT | |
AMD Radeon RX 7800 XT | |
NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti | |
NVIDIA GeForce RTX 4060 Ti | |
NVIDIA GeForce RTX 4060 Ti 16GB | |
NVIDIA GeForce RTX 3070 | |
AMD Radeon RX 6800 | |
AMD Radeon RX 7700 XT | |
AMD Radeon RX 6750 XT | |
NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti | |
AMD Radeon RX 6700 XT | |
NVIDIA GeForce RTX 4060 | |
AMD Radeon RX 6700 | |
AMD Radeon RX 7600 XT | |
AMD Radeon RX 6650 XT | |
AMD Radeon RX 6600 XT | |
AMD Radeon RX 7600 | |
NVIDIA GeForce RTX 3060 8GB | |
Intel Arc A770 | |
NVIDIA GeForce GTX 1660 Ti | |
NVIDIA GeForce RTX 3050 | |
NVIDIA GeForce GTX 1660 SUPER | |
Intel Arc A750 | |
NVIDIA GeForce GTX 1660 | |
Intel Arc A580 | |
NVIDIA GeForce GTX 1650 SUPER | |
Intel Iris Xe | |
Intel UHD Graphics 770 |
CPU内蔵GPUは、一番下の「Intel Iris Xe」「Intel UHD Graphics 770」です。
また、AMDの内臓GPUは、CPUの型番によって性能が異なる上、1つ1つ記載すると量がかなりふえてしまうので、このグラフからは省いています。
スコアとしては、1,500~6,000程度と高性能なCPUであれば、Intelよりも高性能ではあるものの3Dゲームなどをするのであれば、最低でも15,000~20,000は欲しいところです。
このように、性能差があるのは一目瞭然です。
そのため、高いグラフィック性能が必要な用途で使う場合は、グラフィックボードが必要となってきます。
グラフィックボードが必要な使用用途【3Dゲームは必須】
高いグラフィック性能が必要な使用用途では、CPU内蔵GPUでは性能不足なので、グラフィックボードが必須となります。
これを間違えてCPU内蔵GPUにしてしまうと、やりたかったことができなくなってしまうかもしれません。
また、後でグラフィックボードを追加するとなると当初予定していた予算よりも数万円単位で高くなってしまったり、電源ユニットの容量が足りず買い替えることになったりするので、事前に使用用途に応じて、グラフィックボードを搭載するかを決めておきましょう。
主に、グラフィックボードが必要な使用用途は次の通りです。
- 3Dゲーム
- 動画編集(あった方が良い)
- AIの学習
- 画像生成AIの利用
ブラウザゲームや2DゲームによってはCPU内蔵GPUで事足りますが、3Dゲームだとグラフィックの処理が格段に増えるため、CPU内蔵GPUでは性能不足になることがほとんどです。
そのため、3Dゲームを遊びたい方は、グラフィックボードは必須と考えておきましょう。
具体的に、どのくらいの処理が増えるのか一例を紹介しましょう。
- 各オブジェクトを3D空間内でモデル化、テクスチャ(表面の画像)の適用
- 3D空間内での光源の処理(光の方向 / 強度 / 色など)
- 光源に対して生じる影のリアルタイムな処理(光源やオブジェクトが移動すれば影も変わる)
- 草原などの草や木々の揺れ
- 水面やガラスの映り込み
- オブジェクトの動き、落下、衝突、爆発などの物理演算
- 3Dオブジェクトを2D画面に描画するためのレンダリング
- プレイヤー視点(カメラ)を動かした際の再描画
イメージしやすいところではこんな感じですが、2Dと比べてやることが桁違いに増えるため、それだけグラフィック性能が必要となってきます。
このように高度なグラフィック処理をする必要がある上、快適にゲームができるように1秒間に60コマ程度(60FPS)映像を更新し続ける必要があります。
つまり、3Dグラフィックの映像出力は、処理することが桁違いに増えるので、性能の低いCPU内蔵GPUでは処理しきれないという訳です。
CPUに内蔵GPU機能があるかの見分け方
CPUに内蔵GPU機能があるかを見分ける方法について解説していきましょう。
CPUの型番の末尾や製品仕様を確認
CPUの型番の末尾や製品仕様を確認することで、そのCPUに内蔵GPU機能があるかどうかを見分けることができます。
型番の末尾のアルファベットには、メーカー毎に内蔵GPUの有無、CPUクーラーの有無などの意味を持たせています。
そのため、型番の末尾を見ることで、そのCPUに内蔵GPU機能があるか判別することができます。
また、その型番の製品仕様を確認することで判別することもできます。
Intelの場合:末尾に「F」が非搭載
製品仕様では、内蔵GPU機能がある場合は「GPU Specifications」の項目があり、その中にGPU名の記載があります。
もし、内蔵GPU機能がない場合は、そもそも「GPU Specifications」の項目自体がありません。
また、型番の末尾に「F」(KFも含む)が付いていると内蔵GPUは”なし”です。
この場合は、グラフィックボードが必須となります。
それ以外の何もついていないものや「K」が付いているものは、内蔵GPUは”あり”です。
AMDの場合:末尾に「G」が搭載、「F」が非搭載
製品仕様では「グラフィックス機能」の項目に、内蔵GPU機能がない場合は「ディスクリート グラフィックスカードが必要」と記載があり、ある場合は「AMD Radeon 760M」のように内蔵GPUの名称が記載されています。
また、型番の末尾に「G」が付いていると内蔵GPUは”あり”です。
一方で、「F」が付いていると内蔵GPUは”なし”です。
「F」については、Intel CPUと同じですね。
また、末尾が「X」のものもありますが、これは内臓GPUが搭載されていたり、されていなかったりするので製品仕様で確認しましょう。
少し調べた感じ、7000シリーズ以降の末尾が「X」の場合は、内蔵GPUが搭載されているようです。
まとめ:グラボを搭載するかどうかでCPU内蔵GPU機能が必要か分かれる
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- CPU内蔵GPUはCPUのグラフィック機能
- 映像出力には、CPU内蔵GPU or グラフィックボードが必要
- CPU内蔵GPUの性能は、最低限映像出力できる程度(グラボの10分の1)
- 3Dゲームなどの高いグラフィック性能が必要な場合は、グラフィックボードが必須
- Intelの場合:末尾に「F」で内臓GPUが非搭載
- AMDの場合:末尾に「G」で内蔵GPUが搭載、「F」で非搭載
CPU内蔵GPUは、ウェブや動画視聴などの普段使い、ビジネス、プログラミング、2Dゲームなどの軽めな使用用途に適しています。
しかし、それ以上の高いグラフィック性能が必要な3Dゲームなどにおいては、内蔵GPUでは性能不足であるため、グラフィックボードが必須と考えておきましょう。
パソコンには必ずグラフィック機能が必要なので、自作PCで構成を考える際は、CPU内蔵GPUかグラフィックボードのどちらか、または、両方を搭載しているかを確認しておきましょう。
CPUのメーカーや型番の見方、性能の目安などの基本知識、性能面や互換性の観点から選び方も解説しています。
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