電源ユニットの規格は、技術の進歩や環境の変化に応じてバージョンアップしています。
古いバージョンでも問題なく使えることが多いですが、最新の機能を利用したい場合は、バージョンに注意する必要があります。
バージョン毎にどういう機能や改善があったのか知っておくことで、よりスムーズに自作PCのパーツ構成を検討できるようになると思います。
そこで本記事では、電源ユニットの規格のバージョンや主要な電源規格のバージョン毎の仕様を解説していきます。
- 電源ユニットの規格にもバージョンがある
- バージョン毎に機能や性能が向上
- よっぽど古いバージョンでなければ、基本的には気にしなくてOK
- 最新の機能を使いたい場合は、最新バージョンを使う
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目次
電源ユニットの規格のバージョンについて
電源ユニットの規格は、環境に合わせてバージョンアップします。
あまりに古くなければ気にしなくても大丈夫ですが、最新の機能を使いたい場合はバージョンを意識する必要があります。
電源ユニットの規格は環境に合わせてバージョンアップする
電源ユニットの規格は、自作PC全体で新しい機能などが登場した際に、それに合わせてバージョンアップしていきます。
例えば、近年のGPUの高性能化に伴い、より大容量の電力が必要になったため、ATX規格の3.0バージョンから12VHPWRコネクタが導入されました。
そのため、12VHPWRコネクタを使いたい場合は、ATX規格の電源を使うのであれば、バージョン3.0以降が必要となります。
バージョンの確認の他にも、電源ユニットに12VHPWRコネクタがあるかどうかで判断してもOKです。
また、コネクタ以外にもエネルギー効率や安全性の強化、新しいデバイスとの互換性の確保など技術の進歩や環境の変化に対応するために定期的にバージョンアップします。
あまりに古くなければ気にしなくてOK
自作PCをする際の電源ユニットの選び方としては、最低限コネクタの種類や数、電源容量が合っていれば問題ありません。
そのため、バージョンやバージョン毎の仕様まで把握していなくても、電源ユニットを選ぶことはできます。
ただし、あまりに古い電源ユニットは避けた方が良いと思っています。
先ほども述べた通り、コネクタ以外にもエネルギー効率や安全性、互換性の観点からもバージョンアップしており、基本的には新しいものほど性能などが向上しています。
また、性能面であれば基本的に低い方に合わせられるため、他の最新のパーツの性能を最大限引き出すことができないなどの問題が出てしまうリスクもあるかもしれません。
ケンさん
そのため、あまりに古いバージョン(発売日の古い製品)ではなく、1,2年以内に発売された比較的新しい電源ユニットの中から選んだ方が安心ですね。
最新の機能を使いたい場合はバージョンを意識
基本的には、バージョンはあまり気にしなくてOKと言いましたが、最新の機能を使いたい場合は、バージョンを意識するようにしましょう。
12VHPWRコネクタの導入の例でも言ったように、環境に応じて新しいコネクタが追加したりします。
コネクタが追加された場合は、バージョンを意識しなくても仕様や見た目で分かりますが、見た目では分からない部分だとバージョンを見て使いたい機能が搭載されているかチェックする必要があります。
自作PCでは、色々な技術や機能が登場しては消えていったり、そのまま使い続けられていたりするのですが、その技術や機能を使うためのハードウェア要件が厳しい場合もあります。
その際に、電源ユニットや他のパーツの選定を誤ってしまうと技術や機能が使えないということになるので注意が必要です。
電源ユニットの規格別バージョン仕様
現在主流の規格(ATX規格、EPS規格)のバージョン別の仕様について解説します。
なお、SFX, SFX-L規格については、バージョン毎の仕様が分からなかったので省いています。
ATX規格
ATX規格の電源ユニットとは、ATX(Advanced Technology eXtended)規格に基づいて設計されたコンピュータの電源ユニットのことです。
1995年にインテルによって提唱されたこの規格は、パソコンのケースやマザーボードの形状およびサイズ、電源コネクタの配置などを統一するための標準規格です。
ケンさん
では、バージョン別にどういう機能や仕様があるか見ていきましょう。
バージョン | リリース日 | 特徴 |
---|---|---|
– | 1995年後半 | ・4ピン「Molexコネクタ」 ・4ピンBergフロッピードライブコネクタ ・20ピンMolex Mini-fit Jr. ATXマザーボードコネクタ ・6ピンAUXコネクタ |
ATX12V 1.0 | 2000年2月 | ・12Vレールの電力を増加 ・CPUに電力を供給するための追加の4ピン12Vコネクタ ・最低効率が全負荷時68% |
ATX12V 1.1 | 2000年8月 | ・3.3Vレールの電力がわずかに増加 |
ATX12V 1.2 | 2002年1月 | ・-5Vレールが不要(オプション) |
ATX12V 1.3 | 2003年4月 | ・12Vレールの電力をわずかに増加 ・フルロードの最小効率を68%から70%に引き上げ ・シリアルATA電源コネクタの導入(オプションとして定義) ・-5Vレールのガイダンスを削除 |
ATX12V 2.0 | 2003年2月 | ・ほとんどの電力が12Vレールで提供 ・12Vレールが2つ必要 ・ATXマザーボードコネクタが24ピンに拡張 ・シリアルATA電源ケーブルの導入が必須 ・最低効率が軽負荷時60%、通常負荷時70%、全負荷時が68%から70%に |
ATX12V 2.01 | 2004年6月 | ・-5Vレールの参照を削除 |
ATX12V 2.1 | 2005年3月 | ・すべてのレールの電力をわずかに増加 ・最低効率が軽負荷時65%、通常負荷時72%、全負荷時75% ・推奨効率が軽負荷時75%、通常負荷時80%、全負荷時77% |
ATX12V 2.2 | 2005年3月 | ・24ピンATXマザーボードおよび4ピン+12V電源コネクタに対する 高電流シリーズのワイヤ端子を指定 |
ATX12V 2.3 | 2007年3月 | ・推奨効率が80%に引き上げ ・12Vの最小負荷要件が低減 |
ATX12V 2.31 | 2008年2月 | ・最大リップル/ノイズ仕様の追加 ・DC電源保持要件の明確化 |
ATX12V 2.32 | 2020年5月 | ・v2.31仕様の後期改訂版 |
ATX12V 2.4 | 2021年8月 | ・’Design Guide for Desktop Platform Form Factors’のバージョン1.31に指定 |
ATX12V 2.51 | 2021年9月 | ・代替低電力モード(ALPM)のサポートを導入 ※ALPMは、アイドル状態や低負荷状態にある時に消費電力を削減 |
ATX12V 2.52 | 2021年10月 | ・ALPMサポートの電源供給が180秒ごとの電力サイクルに 耐えられることを要求 |
ATX12V 2.53 | 2021年12月 | ・効率性に関するさらなる推奨事項を追加 |
ATX 3.0 | 2022年2月 | ・16ピン12VHPWRコネクタ導入 ・最大600W(H+)、最大675W(H++)を供給 ・GPUが電源ユニットの電力能力を交渉するためのデータラインの追加 ・スパイク処理の要件(100マイクロ秒間で公称出力の2倍) ※最新GPU向けに、一時的に非常に高い電力を必要とする場合に 対応できるようにするためのもの。 |
ATX 3.1 | 2022年 | ・12VHPWR電源コネクタを12V-2×6電源コネクタに置き換え |
EPS規格
EPS規格は、ATX規格の一種で、サーバーやワークステーション用の電源ユニットに特化した規格です。
この規格は、特に高い信頼性と出力安定性が要求される業務用コンピュータに適しているので、一般的なユーザーが選ぶ機会は少ないです。
一般的なATX規格の電源ユニットよりも奥行きが大きい傾向にあり、これにより、高い電源容量や豊富なPCI Expressのコネクタ数をもっているのが特徴です。
では、バージョン別にどういう機能や仕様があるか見ていきましょう。
バージョン | リリース日 | 特徴 |
---|---|---|
2.1 | 2004年 | ・設計ガイドを掲載 |
2.8 | 2007年 | ・共通および分割12Vプレーンへの参照を削除 ・最大800Wまでの高出力レベルを追加 ・最大負荷の75%までのホールドアップ時間要件を削減 ・クロス負荷プロットを追加 ・より厳しい12Vレギュレーションのオプションを追加 ・新しいSSI効率要件を追加(推奨レベルおよび負荷条件) ・12Vレールの電流を増加 ・Tpwok_onの最大時間を500ミリ秒に削減 ・高出力レベルのために5VSBを3.0Aに変更 ・PSMI仕様への参照を追加 ・SMBusセクション(FRUおよびPSMI)を3.3Vに変更し、 5Vの耐性を持たせる ・240VAセクションを変更し、共通プレーンを削除し、 すべての12V出力を<20Aに変更 ・音響電力および気流要件を更新 ・SATAおよびPCI-Express GFXコネクタを追加 ・効率テスト方法を更新 |
2.9 | 2010年 | ・5V電流を30Aに増加 ・650-800Wの出力レベルに対して3.3V/5Vの合計電力を160Wに増加 ・550W-600Wの出力レベルに対して12V1/2電流を増加 ・規制限界を緩和 ・オプションの規制限界を追加 |
2.91 | 2012年 | ・高出力レベルでの3.3Vおよび5Vの負荷におけるエラーを修正 ・3.3V/5Vの合計負荷を170Wに増加 |
2.92 | 2013年 | ・高出力レベル(850W、900W、950W)を追加 ・デュアルGFXおよび16xDIMMsに対応 ・5VSB能力を4Aおよび6Aオプションに増加 ・12V5および関連コネクタを追加 ・新しい効率仕様を追加 ・クロスロード要件を更新 ・12Vの最小負荷を低減 |
まとめ:最新の機能を使いたい場合は要注意!
電源ユニットの規格は、技術の進歩や新しいデバイスの需要に応じてバージョンアップを続けています。
特に、電源ユニットは、PCの安定性や性能を支える重要なパーツです。
改めて、電源ユニットの規格バージョンについてのポイントをまとめておきます。
- 電源ユニットの規格にもバージョンがある
- バージョン毎に機能や性能が向上
- よっぽど古いバージョンでなければ、基本的には気にしなくてOK
- 最新の機能を使いたい場合は、最新バージョンを使う
古いバージョンの電源ユニットでも多くの場合は問題なく使用できますが、最新の機能を最大限に活用したい場合は、バージョンに注意することが大切です。
PCパーツと通販サイトを選ぶだけで、見積もり、互換性チェック、電源容量計算ができるツールも開発したのでぜひ活用してください。 最大5つの構成を保存できるので色々な構成を試せます。
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