SATA規格は、主にストレージを接続するためのインターフェース規格で、自作PCをする上で、データ転送用や電源供給用のケーブルを接続する時、M.2スロットなど様々なところで出てくる用語です。
パーツに対応するSATA規格のバージョンによってデータ転送速度が大きく変わるので注意が必要です。
ケンさん
- SATA規格は、ストレージ接続の主流なインターフェース規格
- 新しい規格としてM.2やNVMeが普及しつつあるが、SATAは依然主流
- SATAは従来のPATAよりも高速でケーブルが扱いやすい
- SATA 1.0から3.5まで各バージョンが存在し、転送速度は最大6.0Gbps
- バージョンが異なるSATA間でも互換性がある
- しかし、速度はバージョンの低い方に合わせられる
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目次
SATA規格とは?
SATA規格とは、SSD・HDDや光学ドライブなどのストレージを接続するためのインターフェース規格で、データ転送の速度や方式、接続インターフェース、物理形状やサイズ、機能などが定められています。
デスクトップPCやノートPC、サーバーなど、さまざまなコンピュータで広く採用されている規格です
SATAは「Serial ATA(シリアルATA)」の略で、従来のParallel ATA(PATA / パラレルATA)に比べてデータ転送速度が速く、ケーブルが細くて扱いやすくエアフローの改善にもつながるという特徴があります。
PATAは、IDEやATAとも呼ばれ、1986年に初めて導入されてから約20年間にわたり主要なインターフェース規格として使われてきました。
しかしながら、信号の物理的な制約などによりデータ転送速度を向上させるのが難しかったため、その限界を突破するために、SATAが2003年に策定されました。
ケンさん
SATA規格のバージョン
SATA規格のバージョン毎に、初期から最新までのデータ転送速度の推移や進化した部分などを解説していきます。
まずは、バージョン毎に表にまとめておきます。
SATA規格 | 策定年 | データ転送速度 | 特徴 |
---|---|---|---|
SATA 1.0 | 2003年 | 1.5Gbps(約150MB/s) | ・PATAからSATAへの移行 ・細いケーブルでエアフロー改善 ・初期のシリアル伝送方式の採用 ・ホットスワップ機能の採用 |
SATA 2.0 | 2004年 | 3.0Gbps(約300MB/s) | ・転送速度の向上 ・ネイティブコマンドキューイング(NCQ)追加 ・ホットプラグとポートマルチプライヤのサポート |
SATA 3.0 | 2009年 | 6.0Gbps(約600MB/s) | ・さらに高速なデータ転送 ・電力管理機能の改善 |
SATA 3.1 | 2011年 | 6.0Gbps(約600MB/s) | ・mSATAのサポート追加 ・小型デバイスへの対応 ・電力管理機能の改善 ・デバイス機能のホスト識別 |
SATA 3.2 | 2013年 | 6.0Gbps(約600MB/s) | ・SATA Express導入 ・M.2フォームファクタのサポート ・PCIe互換性の提供 |
SATA 3.3 | 2016年 | 6.0Gbps(約600MB/s) | ・SMR技術のサポート ・デバイススリープ(DevSleep)機能追加 ・新ピンによる機能拡張 |
SATA 3.4 | 2018年 | 6.0Gbps(約600MB/s) | ・モニタリング機能の強化 |
SATA 3.5 | 2020年 | 6.0Gbps(約600MB/s) | ・既存機能の最適化 |
ケンさん
では、バージョン毎に解説していきますが、3.x系を1つ1つ解説すると長いのでそこはまとめておきたいと思います。
SATA 1.0(SATA Ⅰ)
SATA 1.0(SATA Ⅰ)は、2003年に策定された最初のシリアルATA規格で、データ転送速度は最大1.5Gbps(約150MB/s)です。
この規格は、従来のPATAに比べてデータ転送速度がより速くなり、また、より細いケーブルを使用できるようになったことで、エアフローの改善やケーブル管理の容易さを実現しました。
PATAの最大データ転送速度は、規格の最終版である ATA-7(Ultra ATA/133) で 133MB/s なので、約150MB/sのSATA規格の方が少し速くなりました。
今後のバージョンアップに伴ってデータ転送速度も速くなるので、PATAの信号の物理的な制約などによるデータ転送速度の課題を克服したと言えますね。
また、SATA規格では、ホットスワップ機能をサポートしており、コンピュータをシャットダウンせずにストレージの交換が可能です。
主にサーバー向けの機能で、サービスを止められない環境や迅速なメンテナンスが求められる場面で役立ちます。
特に、システムの可用性(システムを障害で停止させることなく稼働し続けること)や信頼性を高め、ビジネスを止めないための重要な役割を果たします。
ケンさん
SATA 2.0(SATA Ⅱ)
SATA 2.0(SATA Ⅱ)は、SATA 1.0の後継として2004年に策定され、データ転送速度が1.5Gbpsから3.0Gbps(約300MB/s)へと倍増しました。
SATA 1.0の策定が2003年なので約1年という短期スパンでのバージョンアップですが、これは当時の技術進歩の速さや市場の要求に迅速に対応しなければいけなかったという背景があります。
- データ容量の増大
2000年代初頭は、マルチメディアコンテンツや高解像度データの普及により、ストレージの高速化が急務でした。 - メーカーの要望
ストレージメーカーやPCメーカーからの新機能への強い要望があり、迅速な規格策定が求められました。
- 競合技術の存在
他のインターフェース(例:SCSIや初期のSAS)が高性能を提供しており、SATAの競争力を高める必要がありました。
- 市場シェアの拡大
早期に新機能を提供することで、SATA規格の市場シェアを拡大し、業界標準としての地位を確立する狙いがありました。
このような理由から1年という短期間にもかかわらず、2.0の策定に至りました。
SATA 2.0では、NCQ(Native Command Queuing)という機能が追加され、複数のデータ要求を効率的に処理することで、特にランダムアクセス時のパフォーマンスが改善されました。
これにより、データの読み書きがよりスムーズになり、マルチタスク処理の効率が向上しました。
また、パーツのホットスワップ(※)がより安定して行えるようになった他、一つのポートで複数のデバイス接続が可能となり、電力管理機能の改善やデータ保護機能の追加など信頼性と効率性の向上が図られました。
※パソコンの電源を入れて稼働状態(通電された状態)を保ったままパーツの取り外しができること。
SATA 2.0で多くの重要な機能が実装されたことで、以降の多くのコンピュータで標準的に採用されるようになりました。
SATA 3.0(SATA Ⅲ)
SATA 3.0(SATA Ⅲ)は、SATA 2.0の後継として2009年に策定され、データ転送速度が3.0Gbpsから6.0Gbps(約600MB/s)へと倍増しました。
これ以降、SATA 3.0をベースに機能追加などをする形でバージョンアップを重ねて現在の主流のバージョンとなおり、現在のストレージの製品では3.x系に対応しています。
現在のSATA SSDのデータ転送速度が大体550MB/sぐらいなので、SATA 3.0で6.0Gbps(約600MB/s)になったことで、SSDのパフォーマンスを最大限引き出すことができるようになりました。
さらに、SATA 3.2以降では、SATA ExpressやM.2などの新しいインターフェースもサポートされています。
このように、機能やサポートするインターフェースも増え、より利便性が高く、汎用的な規格と進化してきました。
SATA規格の互換性について
SATA規格は互換性を持っているため、SATAのバージョンが古いストレージでも新しいバージョンのSATAポートに接続しても動作します。
例えば、SATA 1.0のストレージをSATA 3.0のポートに接続することが可能です。
ただし、この場合、データ転送速度はSATA 1.0の最大速度に制限されます。
SATAコネクタの形状も変わっていないため、接続して動作させるという点においては、マザーボードのSATAポートとストレージの対応するバージョンが違っていても大丈夫です。
しかし、データ転送速度はバージョンの低い方に合わせられるため、その点については気を付けましょう。
SATAのバージョンの調べ方
製品ごとのSATAバージョンの調べ方としては主に次の2通りです。
- 公式ページの仕様での確認
- ハードウェア情報ツールでの確認
バージョンには気を付けましょうとは言ったものの、最近では、SATA 3.x系に対応したパーツがほとんどなので、パーツ選びの際に「マザーボードのSATA規格のバージョンはこれで、ストレージのバージョンはこれで…」という感じで見る必要もないです。
しかし、念のためバージョンの調べ方についてを解説しておきます。
公式ページの仕様での確認
マザーボードやストレージ製品の公式ページの仕様を確認することで、SATA規格のバージョンが分かります。
もし、複数のストレージを搭載する場合は、マザーボードの仕様からSATAポート数、電源ユニットの仕様からSATAコネクタ数も見ておくと良いでしょう。
ハードウェア情報ツールでの確認
既に搭載しているストレージのSATAのバージョンを確認したい場合は、ハードウェア情報ツールを使います。
例えば、Speecyであれば、このようにSATAのバージョンを確認することができます。
SATA規格の接続インターフェース
SATA規格の接続インターフェースについて、各種形状や用途に応じた接続方式を順に解説していきます。
ケンさん
標準SATA【主流】
標準SATAとは、デスクトップパソコンやノートパソコンのマザーボードと内部ストレージ(SSD/HDD)、光学ドライブ(CD/DVD/Blu-ray)を接続するための、最も一般的で広く使用されているSATAインターフェースです。
データ用のコネクタと電源供給用のコネクタがあり、データ用は7ピンの細長いコネクタ、電源供給用は15ピンの幅広いコネクタとなっています。
M.2【主流】
M.2は、マザーボードに直接接続できる小型の拡張カードスロットで、特にNVMe SSDを搭載するために広く普及しています。
また、Wi-Fi・Bluetoothの拡張カードの接続にも利用され、その用途は多岐にわたります。
ケンさん
M.2スロットは、SATAやPCIe(PCI Express)といった異なるインターフェースをサポートしており、これにより様々な種類のSSDを取り付けることができます。
SATAとして使用する場合は、従来の2.5インチSATA SSDと同様の速度で動作しますが、よりコンパクトな形状を持っています。
一方、NVMe SSDといったPCIeとして使用する場合は、SATAよりもはるかに高速なデータ転送速度なので、データの読み書き速度が大幅に向上します。
≫ 関連記事:M.2スロットとは?NVMe SSD / Wi-Fi・Bluetooth専用スロット【自作PC】
eSATA
eSATA(External Serial ATA)は、2004年に策定された外部ストレージをコンピュータに接続するためのインターフェースで、SATA規格を外部接続用に拡張したものです。
理論値の最大転送速度は3.0Gbps(約300MB/s)で、当時の外部ストレージとのデータのやり取りにおいて非常に高速でした。
その当時は、データ転送速度が480MbpsのUSB 2.0が主流で、速度が約6倍以上です。
これにより、内蔵ストレージと同様の高速データ転送が可能となり、USBなどの他の外部接続方式よりも高いパフォーマンスを提供します。
特に、動画編集やバックアップなどの大容量のデータを迅速に転送する必要がある場合にメリットがあります。
しかしながら、このeSATAはあまり普及せず、現在では使われることはほとんどありません。
おそらく、利便性の問題で、eSATAが電源供給機能を持たないため、外付けドライブには別途電源が必要であることが考えられます。
対照的に、USBはデータ転送と電源供給を一本のケーブルで行えるため、利便性が高いです。
さらに、USB 3.0やThunderboltといった新しい規格が登場し、これらはeSATAを上回る転送速度と利便性を提供しました。
特にUSB 3.0は、既存のUSB 2.0との互換性を保ちながら、はるかに高速なデータ転送を可能にしたため、急速に普及しました。
USB 3.0が2008年に策定され、同年にeSATAに電力供給機能を追加した規格であるPower eSATAも登場しましたが、USBの方が普及が早くeSATAは使われなくなりました。
その結果、eSATAは特定の用途や環境でのみ使用されることが多くなり、一般的な消費者市場ではあまり見かけなくなりました。
mSATA
mSATAは、コンパクトなパソコンに適した小型のSATAインターフェースで、特にノートパソコンや小型デバイスでの使用を目的として設計されています。
通常のSATAと同じデータ転送速度を提供し、物理的な形状はMini PCI Expressスロットに似ており、小型のフォームファクタを実現しています。
これにより、スペースが限られた環境での使用に最適です。
mSATAドライブは、通常の2.5インチのSATAドライブと同様にシリアルATAプロトコルを使用してデータを転送します。
普及の初期段階では、ノートパソコンや一部のデスクトップパソコンで採用されていましたが、M.2規格の登場により徐々に市場での存在感を失っていきました。
M.2は、より小型で高性能なインターフェースを提供し、NVMeプロトコルにも対応しているため、より高速なデータ転送が可能です。
このため、現在ではmSATAではなく、M.2がよく使われています。
SATA Express
SATA Expressは、SATAとPCI Expressの利点を組み合わせたインターフェースで、従来のSATA接続の速度制限を超え、最大16Gbpsの転送速度を実現します。
これにより、SSDなどのストレージデバイスの高いパフォーマンスを引き出すことができます。
ケンさん
マザーボード上のSATA Expressポートは通常のSATAポートと似ていますが、追加のピンがあり、PCI Express信号をサポートしています。
これにより、互換性のあるデバイスを接続することで、より高速なデータ転送が可能です。
しかし、mSATAと同様にSATA Expressの普及も限定的でした。
理由の一つは、M.2やU.2といった他のインターフェースがより高い転送速度と柔軟性を提供したためです。
特にM.2は、コンパクトなフォームファクターと高速なPCIe接続を活かして、多くのノートパソコンやデスクトップPCで採用されました。
また、SATA Expressは専用のケーブルやコネクタが必要で、これが普及の妨げとなりました。
さらに、マザーボードメーカーやストレージデバイスメーカーがSATA Expressをサポートする製品をあまり出さなかったことも影響しています。
その結果、SATA Expressは一部のハイエンド製品で採用されるにとどまり、現在ではNVMeをサポートするM.2やU.2が主流となり、SATA Expressはほとんど使用されなくなっています。
U.2
U.2は、主にサーバーや高性能ワークステーション向けに設計されたストレージ接続インターフェースです。
SATA規格の一つとして、特に大容量で高速なデータ転送を必要とする環境で利用されます。
PCIeを利用することで、従来のSATA接続よりも高速なデータ転送を可能にしています。
このため、大容量データの迅速な処理が求められる環境で重宝されています。
U.2は、通常のSATAポートとは異なる形状をしており専用のケーブルを使用して接続しますが、2.5インチのSSDに対応しているため、既存のサーバーラックに容易に組み込むことができるため、導入のハードルが低いです。
これにより、より高い性能を持つストレージデバイスを簡単に接続できるようになっています。
一方で、一般消費者向けの市場ではM.2のような他のインターフェースが主流となっているため、U.2の普及は限定的です。
Micro SATA
Micro SATAは、主に小型デバイス向けに設計されたSATAインターフェースの一種で、特に1.8インチのSSDやHDDに用いられます。
コンパクトな設計が求められるノートパソコンや携帯機器に適しており、通常のSATAと同様にデータ転送と電源供給を行いますが、コネクタのサイズが小さく設計されています。
これにより、デバイスの内部スペースを有効に活用することが可能です。
しかし、通常のSATAと比べてピンの数が少なく、コネクタの形状も異なるため、互換性には注意が必要です。
普及具合については、一時期小型ノートパソコンや携帯機器での使用が見られましたが、近年ではM.2といったより新しいインターフェースが登場し、これらがより高速で効率的なデータ転送を可能にするため、Micro SATAが使われることはほとんどありません。
また、デバイスの小型化とともにストレージの形状や接続方法も多様化しており、Micro SATAのような特定の規格に依存しない設計が増えています。
そのため、現在の市場においてMicro SATAの普及は限定的であり、特定の用途や古いデバイスでの使用に限られることが多いです。
まとめ:SATA規格はストレージや光学ドライブで使う
主にストレージに使われるSATA規格について、基本からバージョン、その他のSATA規格の接続インターフェースについて解説しました。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- SATA規格は、ストレージ接続の主流なインターフェース規格
- 新しい規格としてM.2やNVMeが普及しつつあるが、SATAは依然主流
- SATAは従来のPATAよりも高速でケーブルが扱いやすい
- SATA 1.0から3.5まで各バージョンが存在し、転送速度は最大6.0Gbps
- バージョンが異なるSATA間でも互換性がある
- しかし、速度はバージョンの低い方に合わせられる
最近では、M.2スロットにNVMe SSDを搭載することが多くなり、光学ドライブの需要も減っているため、SATA規格を使う機会は減っているかもしれません。
しかし、SATA規格はまだまだ主流であり、NVMe SSD以外も使うようなストレージ構成にする場合は使うことになると思います。
一番気を付けないといけないのはデータ転送速度で、バージョン毎に違います。
しかし、SATA 3.x系が登場してからかなりの年数もたっているため、基本的に最近のパーツはSATA 3.x系が使われているので、わざわざSATA 3.xかどうかをチェックすることもなくなってきました。
とは言え、まだまだ主流なSATA規格のことを知っておくのは自作PCをする上で重要だと思うので、この機会に知っておきましょう。
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