「パソコンの作業中の騒音をできるだけ抑えたい…」と静音性の高い自作PCを組みたい方向けに、パソコンの騒音に関する原因と対策を解説します。
その上で、静音性に特化したPCパーツの選び方も紹介します。
静音性の高い自作PCを作るためには、騒音の原因と対策を理解することが大切です。
しかし、それを知らずにPCパーツを選んでしまうと騒音の原因となるパーツで組んでしまうかもしれません。
- 原因:騒音の原因のほぼ100%がファン
- 対策:とにかくファンの回転数を下げる
- 対策:音を外に漏れにくいようにする
- 140mm以上の大型ケースファン
- 駆動部のないSSDを搭載
- 密閉タイプのPCケース
- 吸音材・防音材付のPCケース
- 社外品の簡易水冷式CPUクーラー
- 静音ファン、セミファンレス機能付きの電源ユニット
- 2連/3連ファンのグラフィックボード
他のパーツについても基本的な知識や役割、性能・互換性の観点から選び方を解説しているので参考にしてください。
≫ 関連記事:PCパーツ一覧と各PCパーツ解説【自作PC初心者必見】
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目次
静音性の高い自作PCとは?
静音性の高いPCパーツの解説をする前に、そもそもの騒音の原因について理解を深めておきましょう。
騒音の原因①:ファンの回転音
ファンの回転音は、パソコンの静音性を損なう主な原因の一つです。
原因の一つと言いつつも、ほとんどの原因がこれですね。
ファンの回転数が上がるほど、ファンのブレードが高速で空気を切ることで空気抵抗が増え、その結果として発生する風切り音が大きくなります。
また、高速回転により、モーター音からの音も大きくなりますし、ファン自体が振動して、その振動が騒音として伝わることもあります。
パソコン内には次のように様々な種類のファンが搭載されています。
- CPUクーラーのファン
- グラフィックボードのファン
- PCケースファン
- 電源ユニットのファン
パソコン内部の温度を下げるためにファンは常に回転していますが、このファンの回転数をどれだけ抑えることができるかが静音性の高さのカギとなります。
特に、高性能なパーツを使う場合や高負荷な作業をする場合は、発熱量が増えるため、ファンの回転数も上がり、結果として騒音が大きくなります。
ファンの種類によっては、パソコン内部の様々な場所にある温度センサーを元に、パソコン側が自動的にファンの回転数を制御しています。
例えば、3Dゲームや動画編集のエンコードなどの高負荷な作業をすると、CPU・GPUが温度上昇、ファンの回転数が上がり、騒音も大きくなります。
では、具体的にどういう対策をすればいいのかと言うと次のようなものがあります。
- 大型のファンを選ぶ
- 静音ファンを選ぶ
- 低負荷時にファンが停止する機能のあるものを選ぶ
- ファンの回転数を制御できるPWMファンを選ぶ
- ソフトウェアでファンの回転数を制御する
大型のファンを選ぶ
大きなファンは、同じ風量を低回転で送ることができるため、ノイズを抑えることができます。
そのため、ファンは120mmのサイズが一般的ですが、それより大きい140mmの方がおすすめです。
また、PCケースファンであれば、さらに大型な180mm, 200mmもあります。
しかし、そのサイズに対応しているPCケースは数が少ないので、PCケースのデザイン性や機能、価格と自分がどこまで静音性を重視するかを考えて選びましょう。
静音ファンを選ぶ
ファンの中には、静音に特化したファンがあるので、これを使うことで静音性を高めることができます。
静音ファンは、通常のファンと比べて次のような点が違います。
- ベアリングの種類や品質
- ファンブレード(羽の部分)のデザイン
- ゴム製ダンパーによる振動の抑制
- 低速回転設計
- ノイズ低減のために設計された高品質なモーター
全ての静音ファンで、これら全てを取り入れているわけではないと思いますが、こういった設計・品質にこだわることで通常のファンより静音性の高いファンを実現しています。
セミファンレス機能のあるものを選ぶ
セミファンレスとは、低負荷時や一定の温度以下の時に、ファンの回転が停止する機能のことです。
最近の電源ユニットやグラフィックボードには、このセミファンレス機能が付いた製品もあります。
一方で、CPUクーラーのファンやPCケースファンでは、この機能付きのものは見かけたことがないですね。
セミファンレス機能は、高負荷時は今までと変わらずファンは回転するので静音性は変わりません。
しかし、アイドル状態や軽い作業時にはファンが完全に停止するので、音が全くしません。
ファンの回転数を制御できるPWMファンを選ぶ
PWMファンは、回転数を細かく調整できるファンで、必要なときにだけ回転数を上げることができます。
これにより、アイドル状態や軽い作業の時はファンの回転数を低くして静音性を高めることができます。
また、高負荷時などの必要な時にファンの回転数を上げて、適切なエアフローを確保します。
常に一定の回転数のファンを使うと高負荷時に適切に冷やすことができなかったり、低負荷時なのに必要以上にファンが回転して静音性を損なうことになったりします。
≫ 関連記事:PWM対応ファンとは?回転速度を高精度で制御
ソフトウェアでファンの回転数を制御する
PWMファンを使う場合、ファンの回転数をCPU・GPU使用率や温度情報を元に、自動的にファンの回転を制御することができます。
マザーボードのBIOSやソフトウェアを使って、使用率や温度毎にファンの回転数をどのくらいにするかを予め設定することができます。
例えば、CPU使用率が50%の時、あるいは、温度が50℃の時に、ファンの回転数を50%にするなどの設定が可能です。
デフォルト設定でも十分ですが、さらに設定を突き詰めることで静音性を高めることができます。
ただし、ファンの回転数を落としすぎると、冷却性能不足によりパフォーマンスが低下することになるため、この辺りの調整は、負荷状況や温度をモニタリングして根気強く調整していく必要があります。
騒音の原因②:HDDの動作音
HDDは、内部のディスクが高速で回転していたり、データの読み書きを行う際にヘッドが移動したりと駆動する部品があるため、ここから動作音がします。
製品によって動作音や音の大きさに違いがあるのですが、ファンの騒音と比べると小さいので、それほど気にはなりません。
対策としては、駆動部品のないSSDに変更するのが手っ取り早いですね。
と言うより、最近ではNVMe SSDが主流でHDDを搭載しないことがほとんどなので、あまり気にする必要はありませんね。
静音性を高めるPCパーツ選び方・騒音対策
PCパーツ毎に、静音性を高めるためにはどういう観点で選べばいいかを解説していきます。
【ケースファン】140mm以上の大型ファン
ケースファンは、PCケースに取り付けることで、パソコン内部全体のエアフローを確保するためのパーツです。
ファンには色々なサイズ、回転数、機能などがありますが、静音性の観点から言うと選ぶポイントは次の3つです。
- 120mm, 140mm以上のファンサイズ(できれば140mm)
- 静音設計のファン
- 回転数の調整ができるPWM対応ファン
一般的に、ファンのサイズが大きくなるほど、同じ風量を確保するために必要な回転数が低くなるため、ファンの騒音も軽減できます。
140mmより大きい180, 200mmもありますが、ケースファンやそのサイズに対応したPCケースの製品数が少ないのでかなり選択肢が狭くなります。
そのため、PCケースのデザイン性や仕様、機能、価格と自分がどこまで静音性を求めたいかを考慮して選ぶ必要があります。
【ストレージ】駆動部のないSSDを搭載
NVMe SSD
SATA SSD
HDDはモーターなどの駆動する部品があるため、そこから騒音がしますが、SSDであれば駆動パーツがないため無音です。
2010年代前半は、まだHDDが主流でしたが、最近は、NVMe SSDが主流なので、静音性を意識する、しないに関わらずSSDを搭載すると思います。
そのため、動画をたくさん保存したり、編集したりというような用途で、よっぽどストレージ容量が欲しいという方以外は、HDDを搭載する機会はないと思います。
もし、SSDで容量が足りるのであれば、静音性だけでなく、読み書き速度の観点からもSSDにしておきましょう。
【PCケース】密閉タイプのケース(メッシュタイプはNG)
密閉タイプのケース
メッシュタイプのケース
画像で分かる通り、メッシュタイプは、フロント部分がメッシュ構造になっています。
無数の小さい穴が開いているので通気性が良い反面、ケースファンの音がだだ漏れとなるので静音性が低いです。
一方で、密閉タイプは、音が漏れるところが少ない分、静音性が高いです。
密閉タイプと言っても完全に密閉されているわけではなく、エアフローを確保するために少しだけ吸気口があります。
【PCケース】吸音材・防音材付のPCケース
静音性に特化したPCケースでは、密閉タイプな上に、さらに静音性を高めるために防音材・吸音材が付いたものがあります。
主に、サイドパネル、トップパネルなどに付いていることが多いですね。
一部、防音材・吸音材が付いたケースを紹介しておきます。
【CPUクーラー】社外品の簡易水冷式CPUクーラー
メーカーの純正CPUクーラー
社外品の空冷式CPUクーラー
社外品の水冷式CPUクーラー
CPUクーラーは、CPUを冷却するためのパーツですが、主に次の3種類があります。
- メーカーの純正CPUクーラー
- 社外品の空冷式CPUクーラー
- 社外品の水冷式CPUクーラー
この中で、社外品の水冷式CPUクーラー、最低でも社外品の空冷式CPUクーラーを選びましょう。
純正のCPUクーラーは、ファンのサイズが80mm前後と小さいため、高負荷(CPU使用率:80%以上)になるとファンの回転数が上がり、かなりうるさくなるので基本的には避けた方が良いです。
一方で、空冷式・水冷式CPUクーラーであれば、120, 140mmのファンが搭載されているので、ひとまずファンのサイズ差だけで静音性は高いです。
また、空冷式はファンが1,2個、水冷式はファンが1~3個搭載できるのですが、静音性を求めるのであれば、水冷式の3個ファンが搭載した製品がおすすめです。
騒音を抑えるには、ファンの回転数をどれだけ下げるかが勝負なので、ファンを多く搭載することで、1つ1つのファン回転数を下げて静音性を高めることができます。
例えば、同じ風量を送ることを前提に、30dBAの2つのファンと回転数を上げた1つのファンの騒音を比較してみましょう。
詳しい計算は省きますが、30dBAの2つのファンの場合が33dBA、回転数を上げた1つのファンの場合が48dBAとなるので、ファンの数を増やして、1つ1つの回転数を落とした方が有利と言うことになります。
【電源ユニット】静音ファン、セミファンレス機能
静音性の高い電源ユニットを選ぶには、次の2つのポイントが重要です。
- 静音設計のファンであること
- セミファンレス機能付きであること
電源ユニットにはファンが1台付いていますが、中には静音性を重視した設計のファンを搭載した製品もあります。
静音ファンかどうかは、対応していれば仕様表に書かれているはずなので、パーツ選びの際に確認しておきましょう。
また、電源ユニットによっては、低負荷時にファンを停止する機能(セミファンレスモード)が付いているものもあります。
これを使うことで、アイドル時や軽い作業をしている際の静音性をより高めることができます。
【グラフィックボード】2連/3連ファンのモデル
グラフィックボードには、ファンが1~3個搭載されていますが、静音性の観点から言うと2個か3個のものを選ぶことをおすすめします。
私は、パソログでデスクトップパソコンを2,30台ぐらいレビューをしてきたのですが、計測データと経験から言うと、ファン1個の場合は、2,3個と比較してうるさくなる傾向にありますね。
ファンが、2個と3個の場合はあんまり変わらなかったので、どっちでもいいと思います。
まとめ:高い静音性の自作PCにするならパーツ1つ1つにこだわろう!
静音性の高い自作PCを作るためには、騒音の原因を理解し、それに対応するパーツを選ぶことが重要です。
主な騒音の原因は、ファンの回転音とHDDの動作音です。
しかし、最近ではHDDは主流ではありませんし、仮に使っていたとしてもファンの回転音と比べるとそれほど大したことはありません。
そのため、騒音のほとんどがファンの回転音であるため、このファンを対策することで静音性を高めることができます。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- 原因:騒音の原因のほぼ100%がファン
- 対策:とにかくファンの回転数を下げる
- 対策:音を外に漏れにくいようにする
- 140mm以上の大型ケースファン
- 駆動部のないSSDを搭載
- 密閉タイプのPCケース
- 吸音材・防音材付のPCケース
- 社外品の簡易水冷式CPUクーラー
- 静音ファン、セミファンレス機能付きの電源ユニット
- 2連/3連ファンのグラフィックボード
静音性を高めるPCパーツの選び方まで紹介しましたが、性能や機能、予算、デザイン性などの様々な理由で全て選べないかもしれませんが、参考にしてもらえると嬉しいです。
他のパーツについても基本的な知識や役割、性能・互換性の観点から選び方を解説しているので参考にしてください。
≫ 関連記事:PCパーツ一覧と各PCパーツ解説【自作PC初心者必見】
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