グラフィックボードの補助電源は、高性能なグラフィックボードを安定して動作させるために必要な追加の電力を供給するためのものです。
補助電源を正しく理解してパーツ構成を考えないと、電源ユニットの電源容量が足りなかったり、ゲーブルの種類や本数が足りなかったりするので、パーツを買い直す羽目になります。
また、十分な電源供給ができていないとグラフィックボードやシステム全体が正常に動作しない、最悪の場合にはシステムの不安定化につがります。
この記事では、グラフィックボードの補助電源の重要性や種類、選び方について詳しく解説します。
- グラボは「PCIeスロット」と「補助電源」の両方で電力供給される
- 最近のGPUはPCIeスロットだけでは電力不足(補助電源が必須)
- 補助電源は、12VHPWR(16ピン) / 8ピン / 6ピンの3種類
- 12VHPWRは最新GPU向けの高出力対応コネクタで最大600Wまで供給可能
- 6+2ピンは8ピンとしても使用でき、柔軟性のある補助電源コネクタ
- 電源ユニット選定時は補助電源の種類・本数に対応しているか要確認
- 変換ケーブルの誤接続は発火や火災の危険性があるため要注意
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目次
グラフィックボードの補助電源とは?
グラフィックボードの電力供給方法やその必要性について、詳しく見ていきましょう。
GPUの補助電源について
GPUの補助電源は、グラフィックボードを安定して動作させるに必要な追加の電力を供給するためのものです。
現代の高性能なグラフィックボードは、マザーボードから供給される電力だけでは足りないことが多く、補助電源コネクタを使用して電力を補っています。
一般的に、補助電源コネクタには、6ピンや8ピンのPCI Express補助電源コネクタが使用され、電源ユニットからこれらのコネクタを通じて直接電力を供給します。
適切な電源供給を行わないと、グラフィックボードが正常に動作しなかったり、パフォーマンスが低下したり、システムの不安定化を招く可能性があります。
というか安全面からシステムが起動しないはずです。
ケンさん
電源供給は「PCI Expressスロット」「補助電源」の2つ
グラフィックボードの電源供給は、主に「PCI Expressスロット」と「補助電源」の2つの方法で行われます。
まず、マザーボードに取り付けられたPCI Expressスロットは、グラフィックボードに最大75Wの電力を供給します。
それほど電力が必要でないグラフィックボードでは、補助電源なしでPCI Expressスロットからの電源供給は事足ります。
ケンさん
しかし、最近の高性能なグラフィックボードはこれ以上の電力を必要とすることが多いため、補助電源が必要になります。
補助電源は、通常6ピン、8ピンまたは12VHPWR(16ピン)の電源コネクタを介して供給され、電源ユニットから直接電力を供給します。
6ピンコネクタは最大75W、8ピンコネクタは最大150Wの電力を供給することができ、グラフィックボードの仕様に応じて、1つまたは複数の補助電源コネクタが必要になることがあります。
このように、PCIeスロットと補助電源の組み合わせにより、グラフィックボードは必要な電力を確保し、安定した動作を実現します。
補助電源が必要な理由
グラフィックボードを自作PCに組み込む際、「補助電源が必要かどうか」は非常に重要なチェックポイントです。
特に近年の高性能GPUでは、補助電源はもはや“あって当然”ともいえる存在になっています。
では、なぜグラフィックボードには補助電源が必要なのでしょうか?
- PCI Expressスロットだけでは電力が足りない
グラフィックボードは通常、マザーボード上のPCI Express x16スロットに搭載されますが、スロットからは最大75Wまでしか供給できません。
これはPCIeスロットの規格上の上限であり、それ以上の電力は別の経路から供給する必要があります。 - 最新のGPUは200W以上の電力を消費する
グラフィックボードの性能が向上する一方で、その分、消費電力も大幅に増加しています。
ハイエンドモデルでは、TGP(Total Graphics Power)が200W〜400W超えとなっており、PCIeスロットからの75Wだけでは到底まかなえません。
そのため、補助電源コネクタを使って電源ユニットから直接電力を供給する必要があります。
電力が不足すると、以下のような不具合が発生する可能性があります。
- ゲーム中や3D処理中に画面が真っ暗になる(ブラックアウト)
- フレームレートが不安定になる、処理が途中で止まる
- PCが突然再起動または強制シャットダウンする
- 最悪の場合、パーツの故障や発熱事故につながる可能性も
というか、こういった安全上の問題から最近のグラフィックボードでは、補助電源が接続されていないとそもそも起動しない仕様になっていることが多いはずです。
つまり、安全かつ快適にグラフィックボードを動作させるために必須なのです。
補助電源の種類
補助電源の種類について解説していきます。
自作PCでパーツ構成を考える際は、まず、グラフィックボードにどの種類のPCI Expressコネクタ、12VHPWRコネクタが必要かを確認します。
その後、そのケーブルの種類、必要な本数が搭載されている電源ユニットを選びます。
詳しくはグラフィックボードの選び方を確認してください。
また、パーツを選ぶだけで仕様から互換性をチェックするツールでも確認できるのでぜひ活用してください。
≫ 関連記事:自作PCのグラフィックボードの選び方【性能面 / 機能面 / 互換性】
≫ 関連ツール:自作PCパーツの見積もり・互換性チェックツール
12VHPWR(16ピン)
12VHPWR(16ピン)は、最新のグラフィックボードに対応するために設計された新しい補助電源コネクタです。
12 Volt High Powerの略称なので読み方は「12ボルト・ハイパワーコネクタ」で、大体2022年頃に登場し始めました。
このコネクタは、従来の8ピンや6ピンのコネクタよりも多くの電力を供給でき、仕様により最大供給電力が600W、450W、300W、150Wと設定されています。
規格上はこの4つの電源供給能力に対応しているものの、150WのPCI Expressコネクタが不足でこのコネクタが登場したことを考えると、実質300W以上のものが搭載されることが多いですね。
特に、600Wの供給能力は、最新の高性能GPUをフルに活用するために必要な電力を十分に提供します。
12VHPWRコネクタが開発された背景には、近年のグラフィックスカードやその他の高性能コンピューティングデバイス(ワークステーションやAI学習用コンピュータなど)の電力需要の増加があります。
従来のPCI Expressコネクタ(8ピン, 6ピン)では、最新のハイエンドGPUが必要とする電力を効率的に供給することが難しくなってきました。
特に、NVIDIAのGeForce RTX 40シリーズ、50シリーズなどのハイエンドグラボでは、この12VHPWRコネクタが採用されています。
具体的には、RTX 3090, 4070, 4080, 4090 5070, 5080あたりですね。
ただし、このシリーズが必ず12VHPWRコネクタというわけではなく、PCI Expressコネクタを複数本使っている場合もあります。
そのため、どちらが使われているかは製品ごとに仕様を確認しましょう。
また、このコネクタは、複数のPCI Expressコネクタを接続するより、12VHPWRを1本接続する方がケーブルの取り回しが簡単で、ケース内のスペースを有効に活用できるという利点もあります。
6+2ピン
6+2ピンは、グラフィックボードに電力を供給するための補助電源コネクタ(PCI Expressコネクタ)の一つです。
このコネクタは、6ピンと2ピンの部分に分かれており、合計で8ピンとしても使用できます。
6+2ピンの設計は柔軟性を持たせるためで、6ピンのみを必要とするグラボにも、8ピンを必要とする高性能なグラボにも対応できます。
通常、PCI Expressスロットから供給される75Wに加えて、6ピンのコネクタからの75Wを合わせることで、合計150Wの電力を供給できます。
また、8ピンのコネクタは150W供給できるので、合計225Wの供給が可能です。
ただし、1本だけでは足りない場合は、グラフィックボード側に2本、3本分のコネクタの差し口が設けられています。
これにより、より多くの電力を必要とするグラフィックボードでも安定した動作が可能になります。
特に、RTX 20シリーズ以降の高い電源供給が必要なグラフィックボードでは、この8ピン(6+2ピン)コネクタが必要となることが多いです。
8ピン
8ピンの補助電源コネクタは、最大150ワットの電力を提供します。
6+2ピンと比較すると6+2ピンを8ピンとして使っている時と同じで、ただ単純に6ピンと8ピンに分けられないだけです。
ケンさん
6+2ピンのような柔軟性はなくなりますが、最近のグラフィックボードでは8ピンが必要なことがほとんどなので問題ないと言えば問題ないです。
ただし、RTX 3050, 4060の中でごく一部の製品では6ピンが使われることがあるので注意です。
そのため、グラフィックボードの製品ごとにどの補助電源コネクタが必要か、また、電源ユニットにそのケーブルが付いているかを確認しつつ電源ユニットを選ぶようにしましょう。
6ピン
6ピンの補助電源コネクタは、最大75ワットの電力を提供します。
PCI Expressスロット自体が提供する75Wと合わせて、合計で150Wの電力を供給することが可能です。
ただし、最近では6ピンの補助電源コネクタを必要とするグラフィックボードはほとんどなく、RTXシリーズに入ってからはRTX 3050, 4060の中でごく一部の製品のみです。
それ以上に電源供給が必要な高性能なグラフィックボードがほとんどで、8ピンを複数本、または、12VHPWR(16ピン)を1本という場合が多いです。
そのため、6ピンが使われることは最近ではかなり少なくなっていますね。
PCパーツを選ぶ際の注意点
グラフィックボードの補助電源に関わってくるパーツとしてはグラフィックボードと電源ユニットですが、それらを中心にパーツを選ぶ際の注意点を解説していきます。
電源ユニットのコネクタの種類と本数
電源ユニットを選ぶ際は、グラフィックボードの補助電源コネクタの種類と本数に合わせたものを選ぶ必要があります。
そのために、まず最初に選んだグラフィックボードの補助電源コネクタの仕様を確認しましょう。
グラフィックボードの補助電源コネクタの種類と本数は、製品ごとに決まっています。
例えば、12VHPWRが1本必要、8ピンが2本必要、6ピンが1本必要などです。
複数の種類の補助電源コネクタが必要なことはなく、基本的に1種類のみです。
また、12VHPWRは現状1本のみしか使用しませんが、8ピンや6ピンは複数本必要な場合があります。
グラフィックボードに必要な補助電源コネクタの種類と本数が分かれば、次は電源ユニットのPCI Expressコネクタ、12VHPWRコネクタの仕様を確認して、必要な分のコネクタの種類、本数があるかチェックしましょう。
もし、コネクタの種類や本数を間違えてしまうと最悪グラフィックボードや電源ユニットを買い直す事態になってくるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
12VHPWRの対応有無、電源供給能力の確認
コネクタの種類と本数の確認について説明しましたが、実際のところ、電源ユニットにはPCI Expressコネクタは大体6+2ピンが3~5本ぐらい付いているのが一般的で、そんなに苦労なく選べますし、間違えることもないかと思います。
安い電源ユニットだと6+2ピンが1本でハイエンドなGPUの場合足りなくなる(そもそも電源容量が足りない場合が多いですが…)ことはありますが、大体は幅広くカバーできるだけの6+2ピンが付いています。
しかし、12VHPWRが必要となった場合は、電源ユニットが12VHPWRに対応しているかしっかりと確認する必要があります。
最近普及してきたコネクタであるため、電源ユニットによって付いている、付いていないが明確に分かれているので、適当に選んでしまうと12VHPWRコネクタが付いていなかった…ということにもなります。
そのため「普及してきているから付いているだろう…」ではなく電源ユニットの仕様をしっかり確認しておきましょう。
また、12VHPWRには、最大供給電力が600W、450W、300W、150Wと段階的に設定されています。
このため、使用するグラフィックボードのTGP(Total Graphics Power)を確認した上で、PCIeスロットから供給される最大75W分を含めて、12VHPWRのワット数で十分な電力が供給できるかを確認する必要があります。
例えば次のような場合です。
例①:RTX 4080
TGP:約320W
PCIeスロット:75W
必要な補助電源:約245W
⇒ 12VHPWR(300W以上対応)でOK
例②:RTX 4090
TGP:約450W
PCIeスロット:75W
必要な補助電源:約375W
⇒ 12VHPWR(450W以上対応)でOK
ただ、電源ユニットが12VHPWRに対応しているかどうかは分かるものの、何ワットに対応しているかは仕様に書かれていないことも多いです。
しかし、600W、450W、300W、150Wで設定されていると言っても、150Wは8ピン1本分、300Wは8ピン2本分のため、12VHPWRコネクタが150W、300Wであることはほとんどなく、大体は450W、600Wのどちらかに対応していると思います。
変換ケーブルやアダプタを使う際の注意点【最悪発火・火災】
複数のPCI Express 8ピンを12VHPWRに変換ケーブルするケーブルがあるので、最悪、グラフィックボードの補助電源が12VHPWRで、電源ユニットがPCI Express 8ピンにしか対応していない場合でも、変換ケーブルで対応することができます。
変換ケーブルについては、電源ユニットに付属していることもあれば、別途必要な場合もあるので同梱物を確認しましょう。
しかし、複数のPCI Express 8ピンを12VHPWRに変換する場合、コネクタの差し方に注意が必要です。
右の画像のように、電源ユニットから出ている同一系統のケーブルを分岐(※)して2本だけ接続するような使い方をしてしまうと、1本のケーブルに過剰な電流が流れる状態になります。
※1本のケーブルから2つの8ピンが出ているもの
このような誤接続は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- ケーブルやコネクタ部分の異常な発熱や溶解
- 最悪の場合、焼損や火災につながるリスク
- 高負荷時に電力が足りず、GPUの性能低下や突然のシャットダウン
- 電源ユニット側の保護機能が作動してシステムが強制的に再起動
12VHPWRコネクタは非常に高い電力を必要とするため、適切な本数の8ピンケーブルを電源ユニットの異なる系統から個別に取り出して接続することが絶対条件です。
見た目ではわかりにくい接続ミスですが、電力まわりの設計は安定性と安全性に直結するため、決して軽視してはいけません。
ケンさん
また、グラボ側が12VHPWRコネクタではなく、8ピンが3つ必要な場合、右の画像と同じように同一系統のケーブルを分岐して2本接続して、1本は別系統というような接続方法もNGです。
基本的に8ピンなどの分岐ケーブルは、消費電力が高いハイエンドグラボ向けではなく、消費電力がそれほど高くないグラボ向けに作られています。
そのため、最近のグラフィックボードの性能から見るに、8ピンの分岐ケーブルはあまり使わない方がいいですね。
まとめ:ハイエンドGPUは「12VHPWR」がほぼ必須!
グラフィックボードの補助電源に関する基本的な知識から、補助電源コネクタの種類、パーツを選ぶ際の注意点をまとめました。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- グラボは「PCIeスロット」と「補助電源」の両方で電力供給される
- 最近のGPUはPCIeスロットだけでは電力不足(補助電源が必須)
- 補助電源は、12VHPWR(16ピン) / 8ピン / 6ピンの3種類
- 12VHPWRは最新GPU向けの高出力対応コネクタで最大600Wまで供給可能
- 6+2ピンは8ピンとしても使用でき、柔軟性のある補助電源コネクタ
- 電源ユニット選定時は補助電源の種類・本数に対応しているか要確認
- 変換ケーブルの誤接続は発火や火災の危険性があるため要注意
近年のハイエンドグラフィックボードでは、消費電力の増加により、従来の8ピンや6ピン補助電源では対応が難しくなりつつあります。
その中で登場したのが「12VHPWR(16ピン)」コネクタで、RTX 40シリーズ以降のGPUでは標準的に採用され始めています。
12VHPWRは、最大600Wまでの電力供給に対応しており、1本で済む取り回しの良さと高い電力供給能力が大きなメリットです。
一方で、対応していない電源ユニットも多く、選定時には必ずコネクタの有無と対応ワット数を確認する必要があります。
また、誤った接続や変換ケーブルの使用には発熱・焼損のリスクもあるため、安全性にも十分配慮することが重要です。
ハイエンドGPUを快適・安全に使うには、正しい補助電源の理解と適切なパーツ選びが欠かせません。
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