電源ユニットの保護回路は、電源ユニット自身や他のパーツを守るために重要な機能です。
パソコン全体の安全性と長寿命化に繋がるので、できるだけ保護回路が付いているものを選ぶようにしましょう。
保護回路がないと、過電流や過電圧、短絡、過熱などの異常が発生した際に、パーツが故障・損傷したり、火災が発生したりするリスクがあります。
そこで本記事では、電源ユニットの保護回路の重要性と種類について詳しく解説します。
- 過負荷、過電流、過電圧、短絡、過温度、サージなど様々な異常から守ってくれる。
- 保護機能がないとパーツの故障・損傷、最悪の場合は火災に繋がる。
- 電気系統の素人からすると怖いので保護回路付きがおすすめ。
- 実際保護回路が働く機会はあまりないが保険的な意味で安全性を買おう!
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目次
電源ユニットの保護回路について
まずは、電源回路の保護回路について基本的な知識を押さえておきましょう。
保護回路の必要性
保護回路は、電源ユニットの安全性と信頼性を確保するために不可欠です。
電源ユニットは、過電流、過電圧、短絡、過熱などの異常状態が発生する可能性があります。
これらの異常が発生すると、電源ユニット自体や接続しているパーツが故障・損傷するおそれがあります。
また、最悪の場合、パーツから出火して火災につながる可能性もあります。
保護回路は、これらの異常を検知して迅速に対応することで、電源ユニットとパーツを守ります。
例えば、過電流保護回路は、電流が設定値を超えた場合に電源を遮断し、過温度保護回路は温度が安全範囲を超えた場合に動作を停止させます。
これにより、電源ユニットやパーツの故障や火災のリスクを大幅に減らすことができます。
したがって、保護回路は電源ユニットの安全性や信頼性を高め、できるだけ長くパソコンを使うためには欠かせない機能です。
とは言え、電源ユニットの保護回路については、保険的な意味であった方が絶対にいいのですが、実際に保護回路が働く機会はあまりありません。
私は何台か自作PCをしていますし、パソコンを最低でも1日8時間、20年以上使ってきましたが、保護回路の機能が使われたことはありません。
異常を検知すると電源ユニットが動作を停止し、パソコンが落ちるので分かるはずです。
そのため、何かあった時のための保護回路なので、発生頻度としてはかなり少ないです。
しかし、何かあった時の損失がかなり大きいので、リスクはできるだけ排除しておくという意味で保護回路はあった方が良いです。
ユーザーの安心感
電気関係は個人的には怖いものと考えていて、電源ユニットだけではなく、それに接続しているパーツも故障や損傷してしまいます。
また、最悪の場合、出火して火災に繋がることで重大な事故につながるかもしれません。
保護回路がないことで、そんな不安を抱えつつパソコンで作業をするのは精神衛生上よくないので、このあたりのリスクを減らすためにも保護回路付きの電源ユニットがおすすめです。
長期的なコスト節約
電源ユニットの保護回路は、過負荷、過電流、過温度など異常が発生した際に、故障や損傷を未然に防ぐためのものです。
これにより、修理や交換の頻度を減らすことができるので、電源ユニット自体が保護回路が付いていることによって少し高くなっても、長期的に見ればコストの節約にも繋がります。
また、保護回路が正常に機能することで、修理期間などの予期せぬダウンタイムを減らし、業務の効率を維持することができます。
ケンさん
さらに、保護回路があることで、電源ユニット自体の信頼性が向上し、長期間にわたって安定した電力供給が可能になります。
これにより、電源ユニットの交換サイクルが延び、長期的なコスト節約につながります。
製品仕様ページで保護回路の有無を確認しておこう
自作PC1台を組むとなると15~30万円ぐらいはする高額なものなので、故障や火災などのリスクはできるだけ減らしておくべきです。
そのためにも、電源ユニットを選ぶ際には、製品仕様のページで保護回路の有無を確認しておきましょう。
特に高価なパーツや重要なデータを扱う場合は、保護回路はあった方が安心ですね。
PCパーツを選ぶだけで「見積もり」「互換性チェック」「電力計算」ができるツールを開発したのですが、電源ユニットの保護回路の仕様も確認できるので、ぜひ活用してみてください。
公式の製品仕様のページへのリンクも掲載しているので、手っ取り早く確認できると思います。
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電源ユニットの保護回路の種類・一覧
電源ユニットには、さまざまな種類の保護回路が組み込まれています。
どういう場合に何から保護してくれるのか、1つ1つ見ていきましょう。
まずは、保護回路別に概要と役割について表にまとめた上で、その後詳しく解説していきます。
保護回路 | 概要 | 役割 |
---|---|---|
過負荷保護 (OPP) | 電源ユニットが供給可能な最大電力を 超えた場合に動作を停止する。 | 電源ユニットやパーツの 過熱や故障を防ぐ。 |
過電流保護 (OCP) | 過剰な電流が流れた際に 回路を遮断する。 | 短絡や過負荷によるリスクから パーツを守る。 |
過電圧保護 (OVP) | 設定された電圧の上限を超えた場合に 電源を遮断する。 | 過電圧によるパーツの損傷を防ぐ。 |
低電圧保護 (UVP) | 電圧が一定基準を下回った場合に 動作を停止する。 | 低電圧によるデータ損失や パーツの故障を防ぐ。 |
短絡保護 (SCP) | 短絡が発生した際に即座に 電源を遮断する。 | ショートによる急激な 電流増加からパーツを守る。 |
過温度保護 (OTP) | 電源ユニットが過熱した際に 自動で動作を停止する。 | 内部部品の損傷を防ぎ、 電源の安全性を確保する。 |
無負荷運転保護 (NLO) | 負荷が接続されていない状態でも 安全に動作する。 | 無負荷状態での異常電圧・電流を防ぎ、 電源の寿命を延ばす。 |
サージ・突入電流保護 (SIP) | 突発的な電流変動や サージ電圧から保護する。 | 突入電流や雷サージから 内部回路やパーツを守る。 |
過負荷保護(OPP)
過負荷保護(OPP:Over Power Protection)は、電源ユニットが定格出力を超える負荷になった時に、自動的に電源を遮断する機能です。
この保護回路の動作は、通常、電源ユニット内部の回路で監視されており、過負荷が検出されると瞬時に電源を遮断します。
これにより、電源ユニットや接続されたパーツの過熱や損傷を防ぎます。
過負荷状態とは、電源ユニットが供給できる最大電力を超える負荷がかかることを指します。
例えば、電源ユニットが500Wの電源容量の場合、500Wを超える負荷がかかると過負荷状態となります。
過負荷保護が働くと、電源ユニットは自動的に電力供給を停止し、過負荷が解消されるまで再起動しません。
そのため、パーツを選ぶ際に、パーツ構成に対して電源ユニットの電源容量が適切かどうかをチェックしておく必要があります。
電源容量の計算方法やパーツを選ぶだけで電源容量を計算してくれるツールも作ったのでぜひ活用してください。
過電流保護(OCP)
過電流保護(OCP:Over Current Protection)は、電源ユニットの出力が許容電流を超えた場合に、回路を自動的に遮断する機能です。
過電流は、短絡や過負荷などの原因で発生することがあり、これを放置すると機器の故障や火災のリスクが高まります。
例えば、次のような場合です。
- 内部の配線や基板がショートした場合
- マザーボードやグラフィックカードなどの部品が故障して異常な電流を要求する場合
- パーツ取り付け時の誤配線やコネクタの接触不良
- 故障した外部デバイスが接続されている場合
- システムに異常が発生して通常以上の電流が必要になった場合
- 誤ったオーバークロック設定をした場合
基盤がショートした場合は、抵抗がほぼゼロになるため異常に高い電流が流れます。
このように原因は多岐にわたりますが、どれも故障や誤った設定などによって、異常な電流を要求する場合に発生することが多いですね。
OCPは、これらのリスクを未然に防ぐための重要な保護機能です。
過電圧保護(OVP)
過電圧保護(OVP:Over Voltage Protection)は、電源ユニットが供給する電圧が設定された上限を超えた場合に、自動的に電源を遮断する機能です。
これにより、接続されているパーツや回路が過電圧による損傷を受けるのを防ぎます。
例えば、次のような場合です。
- 電源ユニットの内部故障
- 外部からの電圧変動や電力供給の不安定さ
- 不適切なオーバークロック
- 安価な電源ユニット
安価な電源ユニットや設計の粗悪な製品では、電圧調整が不安定であったり、負荷変動に応じて出力電圧が急上昇することがあるようです。
そのため、セールなどの理由もないのに、相場に対して異様に安い電源ユニットは避けた方が良いでしょう。
OVPは、これらのリスクから自作PCを保護するために重要な役割を果たします。
低電圧保護(UVP)
低電圧保護(UVP:Under Voltage Protection)は、電源ユニットが供給する電圧が一定の基準値を下回った場合に、自動的に電源を遮断する機能です。
この保護回路は、不安定な電圧がパソコンの動作に悪影響を及ぼすのを防ぐためのものです。
低電圧状態が続くと、電子部品が正常に動作しなくなり、データの損失やハードウェアの故障を引き起こす可能性があります。
例えば、経年劣化により電源ユニットが正常だ電圧が供給できなくなったり、出力容量がシステムの要求を満たしていない場合などです。
UVPはこれらのリスクを軽減し、システムの安定性と信頼性を確保します。
短絡保護(SCP)
短絡保護(SCP:Short Circuit Protection)は、電源ユニットが短絡状態を検出した場合に保護するための機能です。
短絡が発生すると電流が急増し、損傷や火災のリスクがありますが、保護機能は電源ユニットや接続されたパーツをこれらの危険から守ります。
例えば、次のような場合に短絡が発生します。
- 組み立て時の配線ミスや接触不良
- コンデンサ、トランジスタ、ICチップなどの各パーツの内部部品の故障
- 金属片やネジなどの異物が基板上に落下
- 水分や液体が基板上に付いてしまう
- 経年劣化で絶縁体が劣化した場合
配線ミスや接触不良、飲み物をこぼしてしまうなど可能性としては割と起こりうることだと思います。
SCPはこのような状況を検知し、電源を即座に遮断することで損傷を防ぎます。
過温度保護(OTP)
過温度保護(OTP:Over Temperature Protection)は、電源ユニット内部の温度が異常に高くなった場合に、自動的に動作を停止させる機能です。
これにより、内部の電子部品が劣化、故障、炎上するリスクを減らします。
過温度保護は、電源ユニット内の温度センサーが一定の温度を超えたことを検知すると作動します。
温度が安全な範囲に戻ると、電源ユニットは再び正常に動作を開始します。
この機能は、特に高負荷がかかる環境や冷却が不十分な状況で重要です。
例えば、次のような場合です。
- 冷却ファンの故障、エアフロー不足、ホコリの蓄積による温度上昇
- ゲームや動画編集などの高負荷な環境を何時間も続けた時に起きるかも
- 夏場の室温が高い時や直射日光が当たる場所で使い続ける。
過温度保護は、電源ユニットの信頼性を高め、故障を未然に防ぐための重要な保護回路の一つです。
無負荷運転保護(NLO)
無負荷運転保護(NLO:No Load Operation Protection)は、電源ユニットが負荷なしで運転する状況を検出した場合に保護するための機能です。
これにより、無負荷状態での電源ユニットの不安定な動作や損傷を防ぐことができます。
電源ユニットは通常、電源供給するパーツに接続されていることを前提に設計されていますが、何らかの理由で負荷が取り外された場合、無負荷状態での動作が必要になることがあります。
例えば、組み立て時に電源ユニットのケーブルやパーツを何も接続しないまま動作させてしまったり、偶然が重なって全ケーブルのコネクタが緩くなる、または、断線するなどで未接続となってしまったりといったケースです。
このとき、無負荷運転保護がないと、電源ユニットが過電圧や過電流などの異常な状態に陥る可能性があります。
サージ・突入電流保護(SIP)
サージ・突入電流保護(SIP:Surge & Inrush Current Protection)は、電源ユニットが急激な電流の変動から保護されるための機能です。
サージは雷などによる急激な電圧上昇を意味し、突入電流は電源投入時の突然の大電流を意味します。
電源を入れた瞬間や雷などの外部要因によって発生する高電圧が電源ユニットに流れ込むと、内部の回路や接続されたパーツに損傷を与える可能性があります。
SIPはこのような突発的な電流の急増を検知し、電源ユニットやパーツを保護する役割を果たします。
具体的には、SIPは電源投入時の突入電流を制限するために、サーミスタなどの部品を使用します。
これにより、電源ユニットが正常に動作を開始する前に、過度な電流が流れるのを防ぎます。
また、雷サージなどの外部からの高電圧が発生した場合には、バリスタが働き、過電圧を吸収して内部回路を守ります。
このように、サージ・突入電流保護は電源ユニットの信頼性を高め、長寿命化を図るために欠かせない保護機能です。
まとめ:電気系統の事故は怖いから保護回路は付けておこう!
電源ユニットの保護回路について基本的な知識と保護回路ごとの詳細な役割を解説しました。
改めて重要なポイントをまとめておきます。
- 過負荷、過電流、過電圧、短絡、過温度、サージなど様々な異常から守ってくれる。
- 保護機能がないとパーツの故障・損傷、最悪の場合は火災に繋がる。
- 電気系統の素人からすると怖いので保護回路付きがおすすめ。
- 実際保護回路が働く機会はあまりないが保険的な意味で安全性を買おう!
過電流、過電圧、短絡、過熱などの異常状態が発生する場合に、電源ユニットやその他のパーツを守るための保護機能です。
そんな事態が良く発生するのかと言われれば全然そんなことはありませんが、1つ何万もするようなパーツが故障・損傷したり、最悪の場合火災に繋がることもあります。
そのため、何かあった時のための保険という意味でも保護機能の付いた電源ユニットにしておくことをおすすめします。
PCパーツと通販サイトを選ぶだけで、見積もり、互換性チェック、電源容量計算ができるツールも開発したのでぜひ活用してください。 最大5つの構成を保存できるので色々な構成を試せます。
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