電源ユニットの認証は、パソコンの電源ユニットがどれだけ効率よく電力を供給できるか、また、どれだけ静かに動作するのかといった性能が基準を満たしているかを保証するためのものです。
認証を受けた電源ユニットには、製品の画像やパッケージにその認証・グレードに応じたマークが付けられるので、ユーザーはそのマークを頼りに、どの認証を取得し、どのグレードの評価を受けているかを知ることができます。
自作PCにおいて、特に電源ユニットのエネルギー効率や静音性を重視する方は、この認証制度がどういうものかは絶対に知っておきましょう。
- 電源ユニットの認証は、エネルギー効率や静音性などの性能を保証するためのもの。
- 認証には、80PLUS認証、ETA認証、LAMBDA認証の3つがあり、80PLUS認証が主流。
- 80PLUS・ETAは主にエネルギー効率、LAMBDA認証は静音性を評価する。
- グレードが高いと電源ユニットの価格が高くなりすぎるので、ほどほどで良い。
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目次
電源ユニットの認証とは?
電源ユニットの認証は、電源ユニットが電源効率や静音性などの基準を満たしていることを保証するためのものです。
これにより、第三者機関によって認証された製品の信頼性や効率性が保証されます。
まずは、電源ユニットの認証について基本的なところを押さえておきましょう。
認証の種類
電源ユニットの認証には、主に次の3つがあります。
認証名 | 会社名 | 評価項目 |
---|---|---|
80PLUS認証 | Cleantech (クリーンテック) | エネルギー効率 |
ETA認証 | Cybenetics (サイベネティクス) | エネルギー効率とエネルギー損失 |
LAMBDA認証 | Cybenetics (サイベネティクス) | ノイズレベル |
80PLUS認証
80PLUS認証は、Cleantech社が提供する認証プログラムで、電源ユニットのエネルギー効率を評価します。
エネルギー効率が80%以上を達成する電源ユニットに対して与えられる認証で、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、チタンなどの効率レベルがあります。
Cleantechは、電力使用量を削減して、環境への負荷を軽減することを目的にエネルギー効率に関する評価と認証を行う会社です。
ETA認証
ETA認証は、Cybeneticsが提供する認証プログラムで、電源ユニットのエネルギー効率とエネルギー損失を評価します。
この認証は、より詳細な効率評価を行い、電源ユニットのエネルギー消費に関する情報が分かります。
Cybeneticsは、電源ユニットの性能を包括的に評価し、消費者に信頼性の高い情報を提供することを目的に、電源ユニットの性能を評価するための詳細なテストと認証をしている会社です。
LAMBDA認証
LAMBDA認証は、同じくCybeneticsが提供する認証プログラムで、電源ユニットのノイズレベルを評価します。
デシベル(dB)単位でノイズを測定し、騒音レベルがどの程度かを評価するための認証です。
そのため、電源ユニットの静音性を求めるユーザーは、LAMBDA認証も見ておいた方が良いでしょう。
主流は80PLUS認証
この中で最も主流な認証が80PLUS認証で、自作PCをする大体のユーザーが参考していると思います。
また、80PLUS認証を取得している電源ユニットの数も全体の9割以上はあると思うので、参考にしやすい指標と言えます。
一方で、ETA認証、LAMBDA認証は、全体の2,3割ぐらいの電源ユニットでしか取得していないので、少し比較しづらい部分があります。
エネルギー効率に関しては80PLUS認証でも事足りますが、静音性を求める場合はLAMBDA認証となるので、取得している電源ユニットの中からとなるとその時点でかなり選択肢は絞られてしまいますね。
ケンさん
高い変換効率による節電効果は薄い(無理に高いものにしなくてOK)
電源ユニットの認証には、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、チタニウムなど色々がありますが、実際のところ、ゴールドやシルバーの認証で十分だと思っています。(グレードについては後程解説します。)
確かに、プラチナやチタンの認証を持つ電源ユニットは効率が高く、電力消費を抑えることができますが、その分電源ユニット自体の価格も高くなります。
例えば、ゴールド認証の電源ユニットとプラチナ認証の電源ユニットを比較すると、プラチナの方が効率は高いですが、変換効率の差はわずか1,2%です。
これに対して、価格差は数千円とかなり大きくなることが多いです。
長期間使用することで電気代の節約効果はありますが、その差額を取り戻すにはかなりの時間がかかることが多いです。
そのため、コストパフォーマンスを考えると、ゴールドやシルバーの認証を持つ電源ユニットで十分です。
これらの認証でも十分な効率を持ち、安定した電力供給が可能です。
無理に高い認証を選ぶ必要はなく、バランスの取れた選択をすることが重要です。
80PLUS認証について
80PLUS認証は、電源ユニットの効率を示す認証制度で、消費電力に対する変換効率が一定の基準を満たしていることを保証します。
この認証には、スタンダード、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、タイタニウムの6つのレベルがあり、レベルが高いほど効率が良いことを意味します。
グレード | ロゴ | 変換効率 (%) | |||
---|---|---|---|---|---|
負荷率:10% | 負荷率:20% | 負荷率:50% | 負荷率:100% | ||
TITANIUM (チタニウム) | 90% | 92% | 94% | 90% | |
PLATINUM (プラチナ) | – | 90% | 92% | 89% | |
GOLD (ゴールド) | – | 87% | 90% | 87% | |
SILVER (シルバー) | – | 85% | 88% | 85% | |
BRONZE (ブロンズ) | – | 82% | 85% | 82% | |
STANDARD (スタンダード) | – | 80% | 80% | 80% |
変換効率は、電源ユニットが消費する電力に対して、どれだけの電力を効率的に出力できるかを示します。
エネルギー効率が高いほど、無駄なエネルギー損失が少なく、より環境に優しい製品となります。
例えば、電源ユニットの負荷が50%の場合、チタニウムのグレードであれば、変換効率は94%となります。
また、電源ユニットは、負荷が50%の時に最も変換効率が高くなるように設計されています。
多くのPCユーザーの使用状況を分析すると、通常の使用時に電源ユニットが最大負荷の50%程度で動作することが多いです。
これは、日常的な作業(ウェブブラウジング、文書作成、軽いゲームなど)において、システムが全力で動作することはまれであるためです。
効率が良い電源ユニットは無駄な電力消費を抑え、発熱も少なくなるので、長期的に見てパソコンの安定稼働や電気代の節約に影響します。
特に高負荷を要するゲーミングPCやサーバーなどでは、高い効率の電源ユニットが良いですね。
ただし、認証レベルが高いほど価格も上がる傾向にあるため、使用目的と予算を踏まえて選ぶことが大切です。
電源ユニットの本体価格を上げて認証レベルを高くしても、その元を取れるほど節電できるかと言われれば難しいので、節電という観点ではあまり気にしすぎるのもよくありません。
ETA認証について
ETA認証も、80PLUS認証と同様にエネルギー効率を示す認証制度で、変換効率以外にもより詳細な効率評価を行います。
グレード | ロゴ | 変換効率 (%) | 力率 (PF) | 5VSB変換効率 (%) | 待機電力 (W) |
---|---|---|---|---|---|
DIAMOND (ダイヤモンド) | 93%以上 | 0.985 以上 | 79% 超 | 0.10W 未満 | |
TITANIUM (チタニウム) | 91%以上, 93%未満 | 0.980 以上 | 77% 超 | 0.13W 未満 | |
PLATINUM (プラチナ) | 89%以上, 91%未満 | 0.975 以上 | 76% 超 | 0.16W 未満 | |
GOLD (ゴールド) | 87%以上, 89%未満 | 0.970 以上 | 75% 超 | 0.19W 未満 | |
SILVER (シルバー) | 85%以上, 87%未満 | 0.960 以上 | 73% 超 | 0.22W 未満 | |
BRONZE (ブロンズ) | 82%以上, 85%未満 | 0.950 以上 | 71% 超 | 0.25W 未満 |
変換効率は、電源ユニットが消費する電力に対して、どれだけの電力を効率的に出力できるかを示します。
力率(Power Factor)は、電源ユニットが供給する電力と消費する電力の比率を示します。
この数値が1に近いほど、効率よく電力を供給できていることを示します。
5VSB変換効率は、電源ユニットの待機状態(スタンバイ状態)で使用される5Vスタンバイラインの電力変換効率を指します。
これは、電源ユニットがメイン出力を停止し、システムがスリープ状態やシャットダウン状態にあるときに供給される5Vの電力の効率を評価するものです。
待機電力は、電源ユニットが待機状態にあるときの消費電力を評価します。
待機電力が低いほど、エネルギーの無駄が少なくなります。
ETA認証は変換効率だけでなく、電力供給の効率性や待機状態の変換効率も評価しており、より詳細な効率評価がされています。
LAMBDA認証について
LAMBDA認証は、他の認証とは違い、デシベル(dB)単位でノイズを測定し、騒音レベルがどの程度かを評価するための認証です。
評価には、A++, A+, A, A-, STANDARD++, STANDARD+, STANDARDの7段階があります。
グレード | ロゴ | 騒音要件 (dB(A)) |
---|---|---|
A++ | 15 dB(A) 未満 | |
A+ | 15 dB(A) 以上, 20 dB(A) 未満 | |
A | 20 dB(A) 以上, 25 dB(A) 未満 | |
A- | 25 dB(A) 以上, 30 dB(A) 未満 | |
STANDARD++ | 30 dB(A) 以上, 35 dB(A) 未満 | |
STANDARD+ | 35 dB(A) 以上, 40 dB(A) 未満 | |
STANDARD | 40 dB(A) 以上, 45 dB(A) 未満 |
私は、メーカーから実機を借りてベンチマークもしている(パソログ)のですが、その中で静音性も計測しています。
今まで何十台も見てみた感覚から言うと、35dBA以下はめちゃくちゃ静かで、そよ風ぐらいなものです。
※ベンチマークの静音性の計測では、電源ユニットのみの騒音ではなく、パソコン全体の騒音を計測しています。
集中すればファンが回っている音は聞こえますが、何かの作業に集中していたり、エアコンや扇風機を使っていたりすると気づかないと思います。
また、STANDARDでは40~45dBAですが、これもまだ静かな方だと思います。人によっては普通ぐらいですね。
決してうるさくはないと思うので、LAMBDA認証を取得さえしていれば大体静かと思っても問題ないでしょう。
また、パソコンの騒音は電源ユニット以外にもCPUクーラーやGPU、ケースファンなど様々で、どちらかというと電源ユニットのファンはもともと静かな方です。
そのため、電源ユニットだけを「A++」のように静音性をマックスにしても、他のファンがうるさければあまり意味がありません。
その点を考慮して他のファンも静音性の高いものにするのか、LAMBDA認証はそこそこのものに留めておくのかなどのの判断をしましょう。
参考までに、デシベル別の目安や例もまとめておきます。
騒音レベルの目安
デシベル(dBA) | 目安① | 目安② | 具体例 |
---|---|---|---|
70 | うるさい | かなりうるさい、かなり大きな声を 出さないと会話ができない | ・騒々しい街頭 ・セミの鳴き声 (2m) |
60 | 非常に大きく聞こえうるさい、 声を大きくすれば会話ができる | ・普通の会話 ・洗濯機、掃除機、テレビ | |
50 | 普通 | 大きく聞こえる、通常の会話は可能 | ・家庭用クーラー (室外機) ・換気扇 (1m) |
40 | 聞こえる会話には支障なし | ・静かな住宅地 ・図書館 | |
30 | 静か | 非常に小さく聞こえる | ・郊外の深夜 ・ささやき声 |
20 | ほとんど聞こえない | ・ささやき ・木の葉のふれあう音 |
まとめ:自作PCで電源ユニットを選ぶ際は、80PLUSは確認しよう
電源ユニットの認証についての基本的な知識と具体的な3つの認証について、グレードや評価項目も含めて解説しました。
主に、エネルギー効率と静音性に関する認証で、それらを重視したいユーザーにとって非常に信頼性があり、参考になるものだと思います。
改めて、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- 電源ユニットの認証は、エネルギー効率や静音性などの性能を保証するためのもの。
- 認証には、80PLUS認証、ETA認証、LAMBDA認証の3つがあり、80PLUS認証が主流。
- 80PLUS・ETAは主にエネルギー効率、LAMBDA認証は静音性を評価する。
- グレードが高いと電源ユニットの価格が高くなりすぎるので、ほどほどで良い。
認証のグレードが高くなればなるほど、電源ユニットの価格も高くなる傾向にあるので、どのグレードが良いのかは自分の要求する条件と予算に応じて考えましょう。
個人的には、あまり追求しすぎるものよくないと考えていて、おすすめとしては真ん中ぐらいのグレードが一番コスパが良いですね。
例えば、80PLUS認証で言うとゴールドやシルバーあたりです。
それ以上にすると変換効率の上昇具合がわずかであるのに対して、電源ユニットの価格が跳ね上がるので、正直あまりおすすめできませんね。
具体的に電気代を計算したわけではないので分かりませんが、価格が上がった分を取り返せるだけの節電にはならないと考えています。
そのため、この辺りの事情も含めて、求めすぎずほどほどな感じで見ていくのが良いと思います。
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