CPUグリスは、自作PCの冷却性能を最大化するために欠かせないものです。
初めての組み立てではCPUクーラー側にグリスが適量塗布されていますが、CPUクーラーの取り付けに失敗したり、メンテナンスでグリスを塗り直したりする際は、別途CPUグリスを購入して、自分で塗布することになります。
もし、間違った塗り方をしてしまうと冷却性能が低くなり、パフォーマンスの低下に繋がります。
そこで、この記事では、CPUグリスの役割や経年劣化などの基本的な知識、CPUグリスを再度塗り直す機会に備えて、塗布方法などについて詳しく解説します。
- CPUグリスの役割は、CPUからCPUクーラーへと円滑に熱を伝える
- グリスは、基本的にCPUクーラー側に1回分塗布されている
- CPUクーラーの取り付けに失敗した場合は別途グリスを購入
- グリスは経年劣化するので、3年に1回ぐらいは塗り直すのがベスト
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目次
自作PCのCPUのグリスについて
CPUの熱を効率よくCPUクーラーに伝えるために、グリスは欠かせないものです。
初めての使用時にはCPUクーラーにグリスが塗布されていますが、2回目以降は別途購入が必要です。
CPUグリスの役割
CPUは、高負荷時になると70℃や80℃にもなる非常に熱を発するパーツなので、パフォーマンスを維持するために、CPUクーラーを使って冷却する必要があります。
グリスは、このCPUの熱をCPUクーラーにスムーズに伝える役割があります。
CPUとヒートシンクの接触面は一見平らに見えますが、実際には微小な凹凸が存在し、直接接触していない部分があります。
これらの隙間に空気が入り込むと、空気は熱を伝えにくいため、冷却効率が低下します。
CPUグリスは、このような隙間を埋めることで、空気の影響を排除し、熱伝導を高めます。
これにより、CPUから発生する熱が効率的にヒートシンクに伝わり、効果的な冷却が可能になります。
むしろ、このCPUグリスがなければ、熱が十分に伝わらないため、CPUの温度が上昇し、性能低下や故障の原因になります。
CPUクーラーに1回分は塗布されている
CPUクーラーには、購入時点でウォーターブロック部分にグリスが塗布されていることが多いです。
そのため、別途CPUグリスを買う必要はなく、そのままCPUクーラーを取り付けることができます。
初めての組み立てでは、グリスの量や塗り方に不安を感じることが多いですが、あらかじめ塗布されているのでその心配も軽減されます。
ただ、製品によっては、CPUクーラー側にグリスが付属していて、それを自分で塗布して使う場合もあります。
塗り直しなどの2回目以降は別途グリスを購入
CPUクーラーの取り付けに失敗してしまった場合は、グリスがぐちゃぐちゃとなり、再利用することができなくなります。
そのため、2回目以降の塗り直しの際には、別途グリスを購入することになります。
自分でグリスを塗る場合は、CPU側にグリスを塗って、その上からCPUクーラーを取り付けます。
また、グリスには色々な製品がありますが、新しいグリスを購入する際には、予算の範囲内で熱伝導率の高い製品を選ぶと良いでしょう。
ただし、液体金属系のグリスは、上級者向けで扱いが難しいので避けるようにしましょう。
3年に1回程度の塗り直しが必要
CPUグリスは、CPUとヒートシンクの間に塗ることで、熱を効率よく伝える役割を果たしますが、時間が経つとグリスは劣化するので、その効果が薄れてしまいます。
そのため、パソコンの使用環境や使用時間にもよりますが、3年に1回ぐらいは塗り直すことをおすすめします。
具体的にグリスが劣化すると次のような影響があります。
乾燥・硬化
グリスが乾燥して硬化し、柔軟性を失うことで、グリスが適切にCPUとヒートシンクの隙間を埋められず、熱伝導が悪化します。
ひび割れ・剥がれ
硬化したグリスがひび割れて、CPUやヒートシンクから剥がれたりすることがあります。
これにより、CPUクーラーに熱を伝えられなくなるため、冷却効率が大幅に低下します。
オイル分離
安価なグリスや特定のシリコンベースのグリスは、グリス内に含まれるオイル成分が分離して漏れ出すことがあります。
残った固形部分は熱伝導性能が低いため冷却性能が低下しますし、オイルが漏れ出すことで他のパーツ(特にマザーボードやグラフィックボード)の故障の原因となるリスクもあります。
酸化・化学反応
金属ベース、液体金属、一部のセラミックベースのグリスは、酸化や化学反応により成分が変質することがあります。
化学的な変質により熱伝導性能が低下し、冷却性能が低下します。
パフォーマンス低下
上記の物理的・化学的変化により、CPUの冷却性能が著しく低下します。
冷却性能が低下することで、CPU温度が上昇し、サーマルスロットリングなどによるパフォーマンスの低下、高負荷時に高いパフォーマンスを維持し続けることができなくなります。
また、最悪の場合、システムがクラッシュしたり、CPUを含む他のパーツの寿命を縮めてしまうリスクもあります。
CPUグリスの種類
CPUグリスには、シリコングリス、シルバーグリスなどさまざまな種類があります。
種類によって、特徴や大体の熱伝導率、扱いやすさなどが変わってくるので、ひとまずどういう種類があるのか押さえておきましょう。
グリス名 | 特徴 | 熱伝導率 (W/mK) | 扱いやすさ | 耐久性 | 導電性 | コスト | レベル |
---|---|---|---|---|---|---|---|
シリコングリス | 汎用性が高く、安価で入手可能 | 1.93 – 13 | 扱いやすい | 中程度 | 非導電性 | 低コスト | 初心者向き |
シルバーグリス | 銀を含み高めの熱伝導率を持つ | 6.5 – 13 | やや扱いにくい | 高い | 導電性 | 中コスト | 中級者向き |
セラミックグリス | 金属を含まず、電気絶縁性があり安全 | 5.1 | 扱いやすい | 中程度 | 非導電性 | 中コスト | 初心者向き |
ダイヤモンドグリス | ダイヤモンド微粒子を含み、 優れた熱伝導率を持つ | 12 – 17 | 扱いにくい | 高い | 非導電性 | 高コスト | 上級者向き |
液体金属グリス | 非常に高い熱伝導率を持つ金属合金 極限の冷却性能を求めたい方向け | 73 – 128 | 非常に扱いにくい | 非常に高い | 導電性 | 高コスト | 上級者向き |
熱伝導率 (W/mK) は、物質が熱をどれだけ効率よく伝えるかを示す指標で、値が高いほど熱を迅速に拡散できるため、冷却効果が高まります。
導電性とは、物質が電気を通す能力を指しますが、CPUグリスの場合、導電性があるかどうかは重要なポイントです。
導電性のあるグリスを使うと、誤ってマザーボードや他の電子部品に付着した場合にショートを引き起こし、ハードウェアの故障や損傷を招く可能性があります。
そのため、自作PC初心者の方や安全性を重視する場合は、非導電性のグリスがおすすめです。
CPUクーラーに付属しているグリスは、シリコングリスが使われることが多いです。
パソコンを安定稼働させるためにはシリコングリスでも十分なので、性能に応じて適切な種類のグリスを選ばないとパソコンがぶっ壊れるということはないので安心してください。
あくまで、より冷却性能を高めて、より高いパフォーマンスを維持し続けるようにしたい方が、シリコングリスではなく、他の熱伝導率の高いものに塗り替えるという感じです。
では、それぞれの特徴と用途について、もう少し深掘りしていきましょう。
シリコングリス
シリコングリスは、最も一般的で広く利用されているCPUグリスの一つです。
主成分がシリコンで、塗布も簡単で、初心者でも扱いやすい点が挙げられます。
さらに、シリコングリスは非導電性のため、誤って基板に付着してもショートのリスクが低いです。
普段使いやゲーム・クリエイティブな用途と幅広い用途で十分な性能を発揮しますが、オーバークロックを行うユーザーや高性能な冷却を求める場合には、あまり適していません。
また、酸化や腐食に対して中程度の耐性があるため、長期間の使用でも安定したパフォーマンスを維持します。
比較的安価でコストパフォーマンスも良く、塗る際に扱いやすいため、初めて自作PCを組む初心者の方や中級者と幅広い方におすすめですね。
シルバーグリス
シルバーグリスは、微細な銀の粒子が含まれているCPUグリスです。
銀の高い熱伝導性により、CPUとクーラーの間で効果的に熱を伝え、冷却性能を向上させます。
シリコングリスよりも全体的に若干熱伝導率が上がっているという感じですね。
特に、オーバークロックや高負荷の作業を行う際に、冷却効率を高めるために使用されます。
しかし、導電性があるため、塗布時にマザーボードや他の電子部品に付着しないよう細心の注意が必要です。
また、シリコングリスと比較すると価格が高めですが、その分の性能向上が期待できます。
セラミックグリス
セラミックグリスは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミック成分を含むCPUグリスです。
製品数自体が少ないので、あまり選択肢にならないかもしれません。
非導電性であるため、誤って他の部品に付着してもショートのリスクが低く、安全に使用できます。
ダイヤモンドグリス
ダイヤモンドグリスは、ダイヤモンド粒子を含んでおり、熱伝導率が高い高性能なグリスです。
特に、ハイエンドなゲーミングPCやプロフェッショナルな作業環境で、その性能が発揮されます。
ただし、価格が高めであるため、予算に余裕がある場合に選択するのが良いでしょう。
また、塗布が少し難しいため、経験者向けの製品と言えます。
液体金属グリス
液体金属グリスは、ガリウムやインジウムなどの液体金属を主成分とする最高の熱伝導率を持つCPUグリスです。
他の種類のグリスと比較しても熱伝導率が格段に違い、CPUの冷却性能を最大限に引き出すことができます。
これらの金属は常温で液体の状態なので、一般的なグリスのようにペースト状のように塗り延ばすような感覚で塗ることができません。
液体なので、表面張力によって水滴にように丸くなりますが、そこを頑張って塗り延ばしていくので、慣れていないと非常に扱いづらいです。
しかし、その優れた熱伝導性により、CPUの熱を迅速にクーラーに伝えることができ、高い冷却性能を実現します。
液体金属グリスは、アルミニウム部品との相性が悪く、腐食を引き起こす可能性があるため、使用する際には互換性のある素材を確認することが重要です。
CPUクーラーのウォーターブロック(CPUやグリスと接地する部分)の素材には、銅が使われることがほとんどです。
しかし、まれに一部分がアルミニウムになっている製品もあるので注意しましょう。
経験者向けの製品であり、冷却性能を最優先するユーザーに適しています。
CPUグリスの塗り方
CPUグリスの塗り方について大まかな流れを解説します。
1回目はCPUクーラー側にグリスが塗られているので、塗り方については問題ないと思います。
なので、取り付けに失敗して塗り直し、経年劣化による塗り直しを想定して説明していきます。
手順①:CPUクーラーを取り外す
まず、CPUグリスを塗るためには、CPUクーラーを取り外す必要があります。
CPUクーラーは、CPUの上に取り付けられている冷却装置なので、これを外さないと塗りたい場所であるCPUにアクセスできません。
まず、作業を始める前に、感電やパーツの損傷を防ぐために、必ずパソコンの電源を切り、電源ケーブルを抜いてください。
次に、PCケースを開けて、内部にアクセスできるようにします。
ケースの開け方は機種によって異なるので、取扱説明書を参考にしてください。
次にCPUクーラーを取り外しますが、CPUクーラーは通常、ネジやクリップで固定されています。
これらを慎重に外して、CPUクーラーを取り外します。
クーラーを外す際には、無理に引っ張らず、少しずつ揺らしながら取り外すと良いでしょう。
パーツ構成などによっては、一度マザーボードごとPCケースから外してからでないとCPUクーラーを取り外せない場合もあります。
手順②:CPUとCPUクーラーを掃除する
CPUクーラーを取り外したら、CPUとCPUクーラーの接触面に残っている古いグリスをアルコールを含んだ布や専用のクリーナーで丁寧に拭き取ります。
アルコールや専用のクリーナがない場合でも、最悪ティッシュや不要な布などで拭き取ってもいいと思います。
ただし、完全に除去するのが難しい場合があったり、ティッシュだと繊維が表面に残ることで、グリスの塗布や熱伝導に悪影響を与えてしまうかもしれません。
ケンさん
CPUとCPUクーラーの両方を掃除したら、完全に乾燥させてから新しいグリスを塗っていきます。
手順③:CPUにグリスを塗る
最初は、CPUクーラー側にグリスが塗布されていますが、自分で塗り直す場合は、CPU側グリスを塗ります。
CPUグリスの塗り方は色々なパターンがありますが、考え方としては、CPUのヒートスプレッダ(銀色の部分)の面全体に、できるだけ薄くなるように塗ります。
ヒートスプレッダの面にグリスが塗られていない空きの部分があると、その部分からは熱が伝わらなくなってしまうので、冷却性能が低下してしまいます。
熱伝導率の高さは、CPUのヒートスプレッダやCPUクーラーのウォーターブロックの金属部分が一番高く、次にCPUグリスで、最後に空気です。
そのため、CPUクーラーに熱を伝えやすいのは、金属間のギザギザをしっかりとグリスで埋めることで空気層をなくしつつも、早く熱伝導率の高い金属部分に伝えるために、グリスを薄く塗ることが大切です。
とは言え、仮にグリスを分厚く塗ったとしても、CPUクーラーの押し付ける力によって外に押し出されるので、冷却性能の観点から言えば大丈夫です。
ただし、押し出されたグリスによってCPUやマザーボード周りが汚れてしまったり、動作に悪影響を与えてしまうリスクがあったりするので、できるだけ薄めに塗りましょう。
CPUのヒートスプレッダがうっすら見えてしまうのは薄すぎますが、うっすら見えないようになるぐらいの厚みが良いかなと思います。
CPUを塗る方法は様々で、CPUの中央に豆粒大のグリスを出して、CPUクーラーの取り付け時の圧力によって塗り延ばす方法。
しかし、この方法だとグリスが円形状に伸びるため、CPUの四隅に行き届かない可能性があります。
これを改善して、中央と四隅よりちょっと内側あたりに分散して塗布する方法もあります。
ケンさん
また、CPUクーラー取り付け時の圧力ではなく、ヘラなどを使って均一に塗った上で、CPUクーラーを取り付ける方法もあります。
私は、グリスを分散させて塗布してCPUクーラーで押し伸ばす方法とヘラで均一にする方法で塗ることが多いですね。
手順④:CPUクーラーを搭載する
CPUグリスを塗ったら、最後にCPUクーラーを取り付けて完了です。
グリスの塗り直しと言うことで、CPUクーラーの取り付け自体は経験済みだと思うので、ここでは詳細は省きます。
ただ、CPUクーラーの取り付けると同時にグリスを塗り広げたい場合は、均等に圧力がかかるように真上から力をかけてグリスを広げます。
クーラーを固定する際には、ネジを対角線上に少しずつ締めていくと、均等に圧力がかかりやすくなります。
まとめ:定期的な塗り直しは必須!
CPUグリスは、CPUの熱を効率よくクーラーに伝えるための重要な役割があります。
もし、間違った塗り方をしてしまうと冷却性能が低くなり、パフォーマンスの低下に繋がります。
再度、CPUグリスのポイントをまとめておきます。
- CPUグリスの役割は、CPUからCPUクーラーへと円滑に熱を伝える
- グリスは、基本的にCPUクーラー側に1回分塗布されている
- CPUクーラーの取り付けに失敗した場合は別途グリスを購入
- グリスは経年劣化するので、3年に1回ぐらいは塗り直すのがベスト
初めての組み立て時にはグリスが塗布されていますが、2回目以降は別途グリスを購入し、適切に塗り直す必要があります。
グリスは経年劣化するので、定期的なメンテナンスとして3年に1回ぐらいの塗り直しをしておくのがおすすめです。
正しい塗布方法を身に着けて、CPUの冷却性能を最大化しましょう。
PCパーツと通販サイトを選ぶだけで、見積もり、互換性チェック、電源容量計算ができるツールも開発したのでぜひ活用してください。 最大5つの構成を保存できるので色々な構成を試せます。
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