キャッシュメモリは、CPUが内部に持っているメモリのことで、パソコンの処理速度を向上させる重要な役割があります。
ただ、CPUを選ぶ際に、基本的にキャッシュメモリの性能を基準に選ぶことはないので、自作PCをする分には重要なポイントのみを知ってもらえれば十分です。
しかし、パソコンやCPUがどういう仕組みなのかを知りたい方は読んで損のない内容だと思います。
- キャッシュメモリは、CPUが頻繁にアクセスするデータや命令を一時的に保存する高速なメモリ
- 役割①:データの読み書き時間を短縮して処理速度を向上
- 役割②:メインメモリの帯域幅を効率的に利用して処理速度を向上
- キャッシュは、1次、2次、3次まであり、容量や速度、設計が異なる。
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目次
CPUのキャッシュメモリとは?
CPUのキャッシュメモリの基本的なところを説明します。
キャッシュメモリの役割
キャッシュメモリは、CPUが頻繁にアクセスするデータや命令を一時的に保存する高速なメモリです。
これにより、CPUは必要なデータをメインメモリ(RAM)から直接読み込むのではなく、より高速なキャッシュメモリから読み込むことができます。
これにより、データの読み書きにかかる時間が短縮され、全体的な処理速度が向上します。
キャッシュメモリは、通常、CPU内部に配置されており、L1キャッシュ、L2キャッシュ、L3キャッシュのように階層構造を持っています。
L1キャッシュは最も高速で、CPUコアに最も近い位置にあります。
L2キャッシュとL3キャッシュはそれぞれ少しずつ遅くなりますが、容量が大きくなります。
この階層構造により、CPUは最も効率的にデータにアクセスできるようになっています。
キャッシュメモリのもう一つの重要な役割は、メモリの帯域幅を効率的に利用することです。
キャッシュメモリがあることで、CPUは同じデータを何度もメインメモリから読み込む必要がなくなり、メモリ帯域幅の無駄遣いを防ぐことができます。
これにより、パソコン全体のパフォーマンスが向上します。
キャッシュメモリとメインメモリの違い
データを一時的に保存するものとしてメインメモリがあるため、何が違うのか疑問に思うかもしれません。
キャッシュメモリとメインメモリの違いは、主に役割と速度に違いがあります。
キャッシュメモリとメインメモリの役割の違い
主な役割は、先述した通り、メインメモリへのアクセス時間を減少させることで効率的に使えるようにするためです。
一方で、メインメモリは、プログラムの実行中に必要なデータやコードを保持し、CPUや他のPCパーツに迅速にアクセスさせるために使用されます。
キャッシュメモリと比べてメインメモリは、色々なパーツ(GPU、ストレージ、チップセット、周辺機器)とデータのやり取りをするため、CPUとのやり取りだけに帯域幅を使われるわけにはいきません。
そのため、CPU専用メモリとしてキャッシュメモリを用意して、頻繁にアクセスするデータのやり取りを行うことで、メインメモリの負荷を下げ、他のパーツとのやり取りをスムーズにさせる役割があります。
キャッシュメモリとメインメモリの速度の違い
キャッシュメモリは非常に高速で、毎秒数十GB~数百GBものデータをやり取りできます。
一方、メインメモリは、キャッシュメモリよりも大容量ですが、速度は毎秒数十GBと遅いです。
※CPUやメモリによって速度は異なるので大雑把に比較しています。
CPUのキャッシュの速度・設計・構造について
キャッシュメモリには、1次キャッシュ(L1)、2次キャッシュ(L2)、3次キャッシュ(L3)の3つのレベルがあり、それぞれの速度と容量が異なります。
1次キャッシュは、最も高速で、CPUコアに最も近い位置にありますが、容量は最も小さいです。
2次キャッシュは、1次キャッシュよりも少し遅いですが、容量は大きくなります。
3次キャッシュは、さらに遅いですが、複数のCPUコアで共有されることが多く、全体の効率を高める役割を果たします。
これらのキャッシュメモリが効率的に機能することで、CPUの処理速度が大幅に向上し、コンピュータ全体のパフォーマンスが向上します。
メモリタイプ | 特徴 | 容量 | 独立/共有 |
---|---|---|---|
L1キャッシュ | ・超高速で小容量 ・コア内にあり非常に近い ・データキャッシュと命令キャッシュに 分かれている | 32KB〜96KB (1コア当たり) | コア毎に独立 |
L2キャッシュ | ・高速で中容量 ・コア内にありやや近い | 512KB〜4MB (1コア当たり) | コア毎に独立 |
L3キャッシュ | ・大容量で中速 ・各コアの外側で少し遠い | 16MB〜64MB | 複数コアで共有 |
メインメモリ | ・大容量だが遅い | 数GB〜数十GB | システム全体で共有 |
1次キャッシュ
1次キャッシュ(L1キャッシュ)は、CPU内で最も高速かつ最も容量の小さいキャッシュメモリです。
CPUのコアごとに専用に設けられており、主に頻繁に使用されるデータや命令を格納します。
これにより、CPUはメインメモリにアクセスする時間を大幅に短縮し、全体的な処理速度を向上させます。
また、設計上、L1キャッシュは命令キャッシュとデータキャッシュに分かれていることが多く、それぞれが独立して動作することで、より効率的なデータ処理が可能となります。
そのため、1次キャッシュの合計容量は、1つ当たりの容量 × コア数 × 2(命令とデータ)となります。
データキャッシュ
データキャッシュ(L1 Data Cache)は、CPUが頻繁にアクセスするデータを一時的に保存するためのキャッシュです。
これは、メモリからのデータ読み書きを高速化するために使用されます。
各コアに専用のデータキャッシュがあり、コアごとに独立して動作します。
命令キャッシュ
命令キャッシュ(L1 Instruction Cache)は、CPUが実行するプログラム命令を一時的に保存するためのキャッシュです。
これは、プログラム命令のフェッチ(※)を高速化するために使用されます。
各コアに専用の命令キャッシュがあり、こちらもコアごとに独立して動作します。
※CPUが次に実行すべきプログラム命令を取得するプロセスのこと。
データキャッシュと命令キャッシュを分ける理由
データキャッシュと命令キャッシュを分離する設計は、同時アクセスの効率向上と最適化の容易さが理由です。
CPUは、命令を取得しながらデータを読み書きすることが多いため、データと命令のキャッシュが別々であると、競合が減り、並行してアクセスする効率が向上します。
また、データにアクセスするパターンと命令を取得するパターンが異なるため、それぞれに最適化されたキャッシュ設計が可能になります。
データにアクセスする際は、プログラムの実行中にデータがメモリ内のさまざまな場所からランダムにアクセスされることが多い(ランダムアクセス)です。
これに対して、プログラムの命令は基本的に連続して取得されることが多い(シーケンシャルアクセス)です。
このような最適な設計が違うので、データキャッシュと命令キャッシュを分けることで、より効率的なデータ処理ができるようになります。
2次キャッシュ
2次キャッシュ(L2キャッシュ)は、1次キャッシュ(L1)よりも大きな容量を持ち、L1キャッシュがデータを見つけられなかった場合に使用されます。
CPUコアとメインメモリの間に位置し、データの読み書き速度を向上させるための中間層として機能します。
これにより、CPUがメインメモリにアクセスする頻度を減らし、全体的な処理速度を向上させることができます。
2次キャッシュの容量や速度は、CPUの設計によって異なりますが、一般的には数百KBから数MB程度です。
また、1次キャッシュと同様にCPUコアごとに専用に設けられることが多いです。
3次キャッシュ
3次キャッシュ(L3キャッシュ)は、CPUのキャッシュメモリの中で最も大きな容量を持ち、最も遅いアクセス速度を持つキャッシュです。
1次、2次キャッシュは、CPUコア毎に設けられていましたが、3次キャッシュは複数のコアで共有しています。
また、3次キャッシュは比較的アクセス速度が遅いですが、容量が大きいのでより多くのデータを保存することができます。
これにより、コア間のデータのやり取りが効率化し、メインメモリへのアクセス回数も減らすことができるので、全体的なパフォーマンスが向上します。
CPUのキャッシュメモリ容量の確認方法
キャッシュメモリの容量の確認方法について説明します。
パソコンに搭載しているCPUの確認方法
自分のパソコンで使っているCPUのキャッシュメモリを調べるには、ハードウェアの情報を見れるソフトウェアを使います。
例えば、タスクマネージャー、CPU-Z、Speccyなどがあり、どれも無料で使えます。
タスクマネージャーの場合
キャッシュメモリの容量だけなら、タスクマネージャーが一番手っ取り早いです。
タスクマネージャーの開き方は、タスクバーを右クリックして、[タスクマネージャー]を選びます。
[パフォーマンス]タグの[CPU]を選ぶと右下にキャッシュ情報が出てきます。
しかし、1次, 2次キャッシュはコア毎に分かれていますが、その合計の容量が表記されるので注意が必要です。
CPU-Zの場合
タブの[CPU]のCacheで確認できます。
キャッシュの種類 | キャッシュの容量 | データ配置方式 |
---|---|---|
L1 Data | 4×32 KByte | 8-way |
L1 Inst. | 4×32 KByte | 8-way |
Level 2 | 4×256 KByte | 4-way |
Level 3 | 8MByte | 16-way |
コア別のキャッシュ容量、1次キャッシュのデータと命令キャッシュ別々の容量も確認することができます。
Speccyの場合
Speccyの場合は、左メニューの[CPU]内のCacheに記載されていますね。
CPU仕様での確認方法
自分のパソコンのCPUではなく、CPUを選ぶ段階で確認したい場合は、製品仕様を確認します。
Intel Core i7-14700Fを例に解説していきましょう。
公式ページの仕様を確認すると[キャッシュ]、[合計 L2 キャッシュ]の2つがあります。
キャッシュは、3次キャッシュの容量です。
合計 L2 キャッシュは、2次キャッシュの合計の容量です。
なお、なぜか1次キャッシュの情報は公式の製品仕様にはなく、購入してからでないと分かりません。
また、AMDの製品仕様では、1次、2次、3次キャッシュの合計容量の記載がありました。
まとめ:メインメモリより速くCPUにデータや命令を届ける
CPUのキャッシュメモリについて、役割やメインメモリとの違い、キャッシュの階層構造、キャッシュ情報の確認方法を解説しました。
自作PCでCPUを選ぶ際は、キャッシュメモリの容量とかは気にしないのですが、パソコンやCPUの仕組みを知るという意味では学びがあったのではないかなと思います。
ケンさん
改めて、CPUのキャッシュメモリの重要なポイントをまとめておきます。
- キャッシュメモリは、CPUが頻繁にアクセスするデータや命令を一時的に保存する高速なメモリ
- 役割①:データの読み書き時間を短縮して処理速度を向上
- 役割②:メインメモリの帯域幅を効率的に利用して処理速度を向上
- キャッシュは、1次、2次、3次まであり、容量や速度、設計が異なる。
メインメモリだけではなく、CPUにもメモリを設けることでパソコン全体のパフォーマンスを上げる設計は、本当によく考えられているなと思います。
一度、自分のパソコンのキャッシュメモリの情報を見てみるのも面白いかもしれませんね。
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